不登校① 不登校児童の数は年間30万人~44万人
2024.09.07
先日パークサイドこころの発達クリニックの医師・心理士向けを対象とした勉強会に参加してきました。院長の原田剛志先生の講義が非常に皆さんにも共有したい内容であったので、ブログに記載させていただきます。
今回のテーマは不登校です。
さまざまな理由で学校に行けなくなる児童・学生がいます。病気や経済的事情だけでなく、自分のつらさをうまく言葉にできず、病院受診もままならないお子さんも少なくありません。
学校に行けなくなる原因には、環境に適応できない状況がベースにあることが多いですが、学校側の問題・本人、家族の問題など個別に考えていく必要がありますが、ある程度システマチックに考えることもできます。
成長とともに学校で直面するハードルには例えば以下のようなものが考えられます。
- 小学校1年生:新しい環境
- 小学校3年生:勉強と9歳の壁(掛け算や割り算といった”概念”を使った計算が壁となる)
- 小学校5年生:女子の成長、スモールグループ・スクールカーストの発生
- 中学校1年生:自分で考えること
この不登校シリーズでは、不登校について構造的に考えていきます。
長期欠席と不登校の定義
年間30日以上の欠席が生じる状態を長期欠席といいます。文部科学省の定義では、不登校の定義を長期欠席者のうち経済的要因により学校に行けなくなったものと病気療養中のため診断名がついたものを除外したものとしています。
文部化科学省の発表ではこの長期欠席者が年間44万人、不登校が年間30万人程度となっていますので
(長期欠席者44万人)- (経済的要因)-(病気療養)>不登校>(文部科学省統計上の不登校30万人)
病気療養中の児童の中には身体の病気で長期入院を余儀なくされているような児童もいるでしょうが、数は限られています。
実際、病院に不登校の相談に行くと何らかの病名がつくことは多いです。小児科や内科で起立調節性障害、自律神経失調症、発達障害などの病名がついていることもあります。
一方で日本の精神科・児童精神科ですぐに受診が可能な診療所は限られていますので、病院に罹っていないために診断名がついていない、本質的に精神科・児童精神科が対応可能な「不登校」はもっといるかもしれません。
したがって、日本の不登校児童は30万人~44万人いるという計算になるのです。
<考察>
30万人いる不登校児童の問題、まずその数の多さに圧倒されました。文部科学省のサイトを参照してみましょう。
令和4年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要 (mext.go.jp)
上記の資料をChat GPTに要点整理させてみると
- ①不登校の増加: 小中学校の不登校児童生徒数は299,048人で、前年度より22.1%増加し、過去最多となりました。
- ②長期欠席者の割合: 在籍生徒の3.2%が不登校でした。
- ③要因: コロナ禍による生活リズムの乱れ、友人関係の構築が難しいことなどが、不登校増加の背景として考えられています。
- ④支援状況: 61.8%の不登校児童生徒が学校内外で相談・指導を受けています。
個人的に気になったのはいじめに関する記載です。SNS時代・コロナ禍の背景になり、いじめの性質が変化しているようです。
- ①いじめ認知件数: 小・中・高等学校および特別支援学校でのいじめの認知件数は681,948件で、前年から約10.8%増加しました。
- ②重大事態: いじめによる重大事態は923件で、前年より約30.7%増加しました。
- ③SNSの影響: ネット上のいじめ認知も増加しており、いじめの認知全体が増えた背景に、SNSを通じた事例の増加があると考えられます。
実は、当院に相談に来る児童の多くは「なんとなく体調が悪くなる」「なんとなく学校に行きたくない」が多く、あきらかないじめを原因とした不登校の相談は少ない傾向にあります。
原田先生の講義では、不適応と過剰適応の問題に注目(今後掲載予定です)しており、当院もそれに倣っているのですが、文科省のレポートではいじめと不登校の因果関係に重点を置いて見ているというのが印象的でした。