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海外の大学で合理的配慮を受けるには?

2025.05.12

発達障害や不安障害、学習障害などを抱える学生が、海外の大学に進学する機会は年々増えています。
でも、いざ現地で「講義についていけない」「試験がうまく受けられない」と気づいたとき、サポートを申し出るには、英語での説明や専門的な書類の提出が必要になります。

もちろん、海外でも支援を受けることは可能ですが、言語や制度の壁を考えると、日本での準備が圧倒的に有利です。
この記事では、海外の大学で合理的配慮を受けるために必要な3つの準備と、実際に申請できる具体的な配慮内容をわかりやすくご紹介します。


✅ 1. 英文診断書・主治医意見書を準備しよう

合理的配慮を受けるためには、医療的根拠を示す診断書や意見書が必要です。以下の項目が含まれることが望ましいです。

  • 診断名(DSM-5/ICD-10に準拠)
  • 学業や生活での困難の具体例
  • 推奨される配慮内容と医学的根拠
  • 英語原本、もしくは翻訳証明付きの英文

早めに主治医に相談し、英文書類の準備が可能か確認しておきましょう。


✅ 2. 大学の障害学生支援窓口に連絡しよう

多くの大学には、**Disability Services(障害学生支援オフィス)**があります。合格が決まったら、できるだけ早く連絡を取りましょう。

英語での相談に不安がある場合は、簡単なメッセージから始めても大丈夫です:

"I have a diagnosis of ADHD/ASD and would like to request accommodations. What documents should I submit?"

メールでのやり取りやZoomでの事前面談を通じて、配慮の希望を伝える場が設けられます。


✅ 3. 自分の「困りごと」と「配慮希望」を言葉にしよう

合理的配慮は、「何ができないか」ではなく、「どうすれば本来の力を発揮できるか」を伝えることがポイントです。
以下に、具体的な困難と配慮例を、疾患ごとのイメージとともにご紹介します。


🧠 講義・学業の場面

  • ノートを取るのが難しい
     → ノートテイカーの利用/スライドの提供
     【例:ADHD、ASD】
  • 試験中に集中が続かない
     → 時間延長/静かな別室での受験
     【例:ADHD、不安障害】
  • 書くのが極端に遅い・苦手
     → タイピング許可/口頭試問の選択
     【例:学習障害、発達性協調運動障害】
  • 英語の聞き取りが苦手
     → 字幕つきの録画やスクリプトの提供
     【例:ASD、軽度知的障害】
  • 不安や体調の波が大きい
     → 出席要件の緩和/休息スペースの利用
     【例:不安障害、双極性障害】

🏠 学外生活の場面

  • ルームシェアが苦手/感覚過敏がある
     → 個室希望、静かな寮フロアの希望
     【例:ASD、CPTSD】
  • 特定の食感・匂いが苦手で食事に困る
     → 代替食や個別対応
     【例:自閉スペクトラム症、摂食障害】
  • 移動やスケジュール管理に不安がある
     → 送迎支援、緊急避難場所の案内など
     【例:ADHD、パニック障害】

🤝 対人関係・グループ活動の場面

  • グループワークが極端に苦手
     → メンバー選択の自由、役割の調整
     【例:ASD、社交不安障害】
  • 人前で話すのが難しい
     → 口頭発表の代替(録画提出など)
     【例:選択性緘黙、吃音症】

🧭 合理的配慮は「特別扱い」ではありません

合理的配慮とは、「本来の学習能力を発揮するためのサポート」です。
視力が弱い人がメガネをかけて試験を受けるのと同じ。“フェアな機会”を保障するための仕組みです。


🔗高校時代からの支援歴が、大学での配慮申請を後押しします

実は、多くの大学では「高校時代からの支援歴」が考慮されます。
在学中から支援を受けていた記録があることで、大学での配慮申請もスムーズになるのです。

だからこそ、困りごとを感じた時点で、早めに専門医を受診し、日本での合理的配慮を受けておくことが大切です。

👉 中学・高校での合理的配慮の申請方法については、こちらの記事もご参考に:
【中学受験・高校受験】合理的配慮の申請方法と注意点


💬 まとめ

海外の大学でも、あなたの「困りごと」に応じた支援を受けることは可能です。
でも、英語でのやりとり、制度の違い、手続きの煩雑さを考えると、準備は日本にいるうちに済ませておくのがベスト。

当院では、英文診断書の作成や支援希望の整理もお手伝いしています。
不安や疑問がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。