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家族がうつ病になったとき、どう寄り添えばいいのか?

2025.08.24

身近な人が「うつ病」と診断されたとき、家族はどんなふうに接したらよいのでしょうか。
「どう声をかけたらいいのか分からない」「励ました方がいいのか、そっとしておくべきか…」と悩む方は多いと思います。

ここでは、うつ病の方に家族ができるサポートを、わかりやすくまとめました。


1. 病気として理解する

うつ病は「気の持ちよう」や「性格の問題」ではなく、医学的に認められた病気です。
「がんばれば治るはず」「怠けているだけ」といった言葉は、患者さんをさらに追い込んでしまいます。

まずは「病気なんだ」という理解から始めてください。


2. 休養と安心を優先する

うつ病のときは、心も体もエネルギーがすっかり消耗しています。
十分な睡眠や休養がとれるように、静かな環境を整えることが大切です。

また、「死にたい」といった強い思いが出る場合もあります。そんなときは、一人にせず見守ってください。


3. 日常の負担を減らす

料理・掃除・買い物など、日常のちょっとしたことも、うつ病の時期にはとても重荷になります。
できる範囲で家族がサポートし、「本人が全部やらなければならない状況」を減らしてあげましょう。

「今日は私が夕食を作るね」そんな一言だけでも、大きな支えになります。


4. 無理に話させない

「どうしてつらいの?」「もっと前向きに考えてみたら?」と問い詰めるのは逆効果です。
話したくないときは、無理に言葉を引き出す必要はありません。

ただそばにいて、静かに聞いてあげること。
その「安心できる空気」が、患者さんにとって一番の薬になります。


5. 治療を一緒に支える

通院やお薬の継続は、うつ病から回復するための大切な柱です。
でも、気持ちが落ち込んでいると「病院に行きたくない」「薬をやめたい」と感じることも。

そんなとき、家族が「一緒に病院へ行こうか」と寄り添ってくれると、とても心強いものです。


6. 家族も無理をしない

「支えなきゃ」と思うあまり、家族自身が疲れてしまうことも少なくありません。
ときには相談窓口や支援機関を利用して、家族自身の心も守ってください。

家族が元気でいることは、患者さんにとっても安心につながります。


まとめ

うつ病の回復を助けるのは、「無理に治そうとすること」ではなく、安心できる環境をそっと整えることです。
あたたかい見守りと小さなサポートが、患者さんの大きな力になります。

適応障害?それともうつ病?病院を受診するのはいつがいい?

2025.07.28

「会社に行きたくない…これって甘え?それとも病気?」そんな不調に悩むあなたへ。適応障害とうつ病の違い、受診の目安、休むことへの不安への対処を、精神科医がわかりやすく解説します。。

はじめに:誰にでも起こりうる「心の不調」

「最近、仕事がつらい」「涙が出る」「朝起きられない」「でも、これって“病気”なのかな?」
そんな疑問を持ってこの記事にたどり着いた方も多いのではないでしょうか。

心の不調は誰にでも起こりえます。
しかし、「これって適応障害?うつ病?それともただのストレス?」と迷ったとき、受診のタイミングを逃さないことがとても大切です。


適応障害とうつ病の違いとは?

項目適応障害うつ病
原因明確なストレス因(例:職場の異動、家庭内トラブルなど)原因が明確でないことも多い
症状抑うつ、不安、イライラ、不眠などがストレス状況に反応して出現気分の落ち込み、意欲低下、興味喪失、自責感、希死念慮などが持続的にみられる
経過原因から離れると改善することが多い時間が経っても自然回復しにくく、長期化しやすい
重症度軽度〜中等度中等度〜重度

※DSM-5を基に整理


どんなときに受診したらいい?

受診を検討すべき目安を以下に整理します:

✅ 2週間以上、不調が続いている

  • 気分の落ち込み、食欲低下、眠れない、仕事に行けない etc.

✅ 日常生活や仕事に支障が出てきた

  • 遅刻・欠勤が増えている
  • ミスが多く、集中できない
  • 人と会うのがおっくうになってきた

✅ 身体にも影響が出ている

  • 胃痛や頭痛が続く
  • 何度も風邪を引くようになった
  • 朝が特につらくて起きられない

✅ 「もう限界かもしれない」と感じる瞬間がある

  • 「自分がいない方がいい」と思ってしまう
  • SNSを見ていて涙が出る
  • 怒りや不安がコントロールできない

よくある相談:「受診するほどじゃないと思ってた」

実際、初診時によく聞かれる言葉があります。

「もっと早く来ればよかった」
「自分では“甘え”だと思ってた」
「休むことに罪悪感があって……」

こうした思い込みが回復を遅らせてしまうこともあります。
メンタルの不調は早めに相談すればするほど軽症で済みます
病気かどうかを判断するのは医師に任せて、気になる時点で受診してよいと思われます。


適応障害から「うつ病」へ──進行してしまうケースも

適応障害は、ストレス源(職場・家庭など)からの影響によって一時的に心身のバランスが崩れる状態です。
しかし、放置したり無理を続けたりすると、次第にストレス耐性が低下し、うつ病へ移行することがあります

【進行例】

  • 最初は「会社の上司との関係がつらい」という不安や焦燥感だった
  • 我慢し続けるうちに食欲がなくなり、寝ても疲れが取れないように
  • 次第に「自分がダメだからだ」「消えてしまいたい」という気持ちに
  • 通院したときには、すでに中等度以上のうつ病と診断された

このように、「環境ストレス」が発端でも、長期化・重症化して「病気の自律性」が強くなると、単なる適応障害では済まなくなってしまいます。


「休む」ことが、なぜこんなに難しいのか?

多くの方が、医師に「一度休みましょう」と勧められたとき、こう答えます:

「迷惑をかけたくない」
「休むなんて甘えているみたいで……」
「みんな我慢してるのに自分だけ休むのはダメだと思った」

しかし、こうした思い込みこそが回復を遅らせてしまいます。

休むとは「逃げ」ではなく、回復に必要な“治療のひとつ”です。
例えば骨折したらギプスで固定し、安静にするように、こころの疲労にも「休息という処方」が必要です。

治療・療養のポイント

  • 休職や休学は「自己責任」ではなく「治療の一環」
  • 医師の診断書があれば制度的にも休むことが認められることが多い
  • 精神保健の制度(傷病手当、自立支援医療など)で経済的なサポートも可能


まとめ:悩んだら、まずは相談を

  • 適応障害とうつ病は“重なって”現れることもあります
  • 病気かどうかを「自己診断」しすぎないでください
  • 心や体に不調が出たら、それはすでにサインです

「病院に行ってもいいのか?」と迷ったら、それはもう行っていいサインです。


ご相談はお気軽に

当院では初診の方でも安心してご相談いただけるよう、WEB問診やLINEでの事前相談もご用意しています。
気になる症状がある方は、どうぞお気軽にお問い合わせください。

減酒の薬、セリンクロ──やめなくていいお酒の治療の話

2025.07.01

お酒をやめるのは難しいけれど、このままでは不安。そんな方に向けて、アルコール依存症治療薬セリンクロ(ナルメフェン)と「減酒」という選択肢を、医学的な立場から丁寧に解説します。

「お酒をやめるのは無理。でも、減らしたい」

そんな声を多く耳にします。

仕事のストレス、人付き合い、孤独感──
飲酒の背景には、それぞれの人生があります。
けれど、飲みすぎによって健康を損ねたり、家庭や仕事に影響が出始めたりすると、「そろそろ向き合わなければ」と感じる方も少なくありません。

完全にやめるのは難しいけれど、「少しずつでも減らせたら」。
そのような方に対して、医学的にアプローチできる選択肢のひとつが**セリンクロ(一般名:ナルメフェン)**です。


セリンクロとは?──“飲酒前に飲む”減酒の薬

セリンクロは、アルコール依存症の方を対象とした治療薬です。
従来の治療薬とは異なり、「断酒」ではなく「減酒」を目的としています。

  • 服用タイミング:お酒を飲む可能性のある日の、飲酒の1〜2時間前に1錠
  • 作用機序:脳の報酬系に働きかけ、飲酒による快感を和らげる
  • 特徴:毎日飲まなくてもよい“必要時服用型”

つまり、「今日は飲んでしまいそうだな」と思う日だけ服用する薬です。
完全にやめるのが難しい方でも、少しずつ飲酒の頻度や量をコントロールする手助けになります。


とはいえ──治療の第一選択は「断酒」です

ここで大切なことをお伝えします。

セリンクロは確かに画期的な薬ですが、**アルコール依存症の標準的な治療はあくまで「断酒」**です。
セリンクロは、どうしても断酒が難しい場合に、次善の策として「減酒から始めたい」という希望に寄り添う選択肢です。

したがって、対象となるのは医師が「アルコール依存症」と診断した方のみです。
単なる“飲みすぎ”や“気になる程度”では処方の対象にはなりません。


「飲んだ量」を記録してみませんか?──減酒にっきアプリの活用

減酒治療をサポートするツールとして、**大塚製薬が提供している無料アプリ『減酒にっき』**があります。

  • 飲酒日・飲酒量の記録
  • 飲まなかった日には「クローバー」、適量の日には「スマイル」などの視覚的フィードバック
  • 日記形式で気分や体調も記録可能

こうした自己観察の習慣は、セリンクロの効果をより実感しやすくするだけでなく、自分自身の変化に気づく大きな手がかりになります。

※アプリの使用だけで治療が完結するわけではなく、医師の診察と併用して用いることが推奨されています。


最後に──「お酒をやめるか、やめないか」はあなたが決めていい

減酒治療の目的は、「依存に支配されない人生を取り戻すこと」です。
そのための方法が、断酒であっても、減酒であっても、「自分で選ぶ」ことが何より大切です。

当院では、アルコールとの付き合い方を見直したいと考えている方のご相談をお受けしています。
ひとりで抱え込まず、まずは話してみませんか?


※ご注意

  • セリンクロは、医師の診断と処方が必要な医療用医薬品です。
  • 本記事は情報提供を目的としており、特定の治療を推奨するものではありません。
  • 治療の可否や適応については、必ず医療機関でご相談ください。

退職届を拒否されたらどうする?法律と実務で押さえるべきポイント【現役医師が解説】

2025.06.02

退職届を受け取ってもらえない…?2週間ルールの法律解説と、企業側への配慮も忘れない“円満退職”のヒントを精神科医が解説します。

「退職届を受け取ってもらえない」──それでも辞められるって本当?

こんにちは、テスラクリニックです。
今回は、よくご相談いただく「退職にまつわるトラブル」について取り上げます。

特に多いのが、

「退職届を出したのに、上司に『認められない』と言われて困っています…」
というお悩み。

法律的にはどうなのか? そして、職場と揉めずに退職するにはどうすればいいのか?
今日は少し丁寧に考えてみたいと思います。


🧭 法律では「2週間前の退職申し出」でOK

民法627条によれば、正社員などの無期雇用の労働者は2週間前までに退職の意思を伝えれば、原則として退職できます
就業規則に「1ヶ月前までに申し出ること」と書かれていても、法律の原則が優先されるケースが多いのが実際です。


🤝 でも、職場の現場では“人間関係”がある

ここで忘れてはいけないのが、会社や上司の側にも事情があるということ。

多くの企業では、人手不足や引き継ぎの問題に常に悩んでいます。
「急な退職」が発生すると、そのしわ寄せは同僚や管理職に向かいます。

例えば、人事の方から見れば、
「この1ヶ月で後任を探し、引き継ぎをしてもらい、顧客対応に穴が空かないよう調整する」
というハードモードをこなさなければならない。

だからこそ、就業規則で「1ヶ月前の申し出」をお願いしている企業が多いのです。


⚖️ それでも、辞める権利は守られる

とはいえ、心身に限界がきている状態で「あと1ヶ月がんばれ」と言われるのは酷な話です。
私たち精神科の外来でも、「もう限界。でも会社が辞めさせてくれない」と涙ながらに語られる方がいます。

法律は、最終的には働く人の“逃げ道”を守るために存在します。
2週間ルールは、まさにそのための安全弁です。


✅ 退職届を拒否された場合の対応

  1. 書面で記録を残す(内容証明郵便)
  2. メールやLINEでも記録は有効
  3. それでも辞めさせてもらえない場合は、労基署や退職代行も視野に

🧘‍♀️「揉めずに辞める」ためにできること

  • なるべく感情的にならず、淡々と意思を伝える
  • 可能であれば引き継ぎ計画を用意しておく
  • 上司や同僚に感謝の一言を添える

これらは義務ではありませんが、「円満退職」を目指す上での知恵です。


👨‍⚕️ それでも心が折れそうなときは

「辞めたい」と思う気持ちは、心からのSOSかもしれません。
追い詰められて体調を崩してしまう前に、どうか早めにご相談ください。

当院では、退職や職場の人間関係でお悩みの方にも対応しています。


💬 ご相談はお気軽に

✅ 退職を考えているけど手続きに不安がある
✅ 職場とのやり取りで疲弊している
✅ 初診から話を聞いてほしい

当院では、会社・個人事業主・人事の方からのご相談も承っております。
職場のメンタルヘルスに関する医療相談は、25分あたり5,500円(税込)です。
ご希望の際は、「医療相談」としてご予約ください。

日曜・夜間の診療も可能です。
公式LINEまたはWeb予約からどうぞ。


🔚最後に

辞める側、支える側、それぞれに“正しさ”があります。
だからこそ、対立ではなく「整理された対話」が必要だと私たちは考えています。

もし今、ひとりで悩んでいる方がいれば。
その荷物を、ほんの少しだけでも一緒に持たせてください。

仕事を辞める前に精神科を受診しないと損をする?――初診日の落とし穴とは

2025.05.26

精神科の初診日は、傷病手当や失業給付の支給開始日などの条件に影響します。仕事を休む・辞める前に必ず知っておきたい制度と受診のタイミングとは?

「仕事を辞めようかな」と感じているあなたへ

朝、職場のことを考えると胸が苦しくなったり、
涙が止まらなくなったり――
それでも何とか日々をこなしている方が、いま多くいらっしゃいます。

「このままではもう無理かも」
そう感じて初めて、休職や退職を考える方も少なくありません。

ですがそのとき、「受診のタイミング」によっては制度が使えなくなることがあるのをご存知でしょうか?

たとえば、傷病手当や失業給付などの公的制度は、**“いつ医療機関を受診したか(初診日)”**によって使えるかどうかが変わってしまう場合があります。

本記事では、知らないと損をしてしまう「初診日の落とし穴」について、できるだけわかりやすく解説します。


精神科を受診するタイミングには、制度上の“盲点”があります

私たちは日々、こんなご相談を受けています。

「体調を崩して仕事を休んだのですが、あとから病院に行っても手当はもらえるのでしょうか?」
「退職したあとに受診したのですが、傷病手当金が申請できないと言われました…」

このようなケースでは、医療機関を受診した“日付(初診日)”が重要な意味を持つことがあります。


制度上、初診日によって受けられる保障が変わることがあります

【傷病手当金申請】

  • 初診日が仕事を休む前にあることが原則。
  • 休職後に初診を受けた場合、傷病手当申請の対象外になる期間が生じる可能性があります。

【特定事由休職者としての失業給付】

  • 精神的・身体的な理由による退職で、退職前から治療を受けている場合に適用されやすくなります。
  • 退職後の初診となった場合、一般の自己都合退職とみなされることがあり、必要な給付を受けられなくなる可能性があります。

「病院に行くのはまだ早いかも…」と思っている方へ

精神科の受診は、なにも「すぐに診断書を書いてもらう」ためのものではありません。

・今の状態を整理してみたい
・自分にどんな選択肢があるか知りたい
・少し話をして、気持ちを落ち着けたい

そうした思いで受診される方がたくさんいらっしゃいます。
診断や薬が前提ではありませんし、相談だけでも構いません。


大切なのは、「適切なタイミングで、必要な支援につながること」

受診は、休職や退職を勧めるためのものではありません。
けれども、いざというときに制度を使える状態にしておくことは、結果的に自分を守ることにつながります。

当院では、そうした「まだ迷っている」「でも、少し相談してみたい」という方の初診も受け付けています。
オンライン診療も可能ですので、安心してご相談ください。

海外の大学で合理的配慮を受けるには?

2025.05.12

発達障害や不安障害、学習障害などを抱える学生が、海外の大学に進学する機会は年々増えています。
でも、いざ現地で「講義についていけない」「試験がうまく受けられない」と気づいたとき、サポートを申し出るには、英語での説明や専門的な書類の提出が必要になります。

もちろん、海外でも支援を受けることは可能ですが、言語や制度の壁を考えると、日本での準備が圧倒的に有利です。
この記事では、海外の大学で合理的配慮を受けるために必要な3つの準備と、実際に申請できる具体的な配慮内容をわかりやすくご紹介します。


✅ 1. 英文診断書・主治医意見書を準備しよう

合理的配慮を受けるためには、医療的根拠を示す診断書や意見書が必要です。以下の項目が含まれることが望ましいです。

  • 診断名(DSM-5/ICD-10に準拠)
  • 学業や生活での困難の具体例
  • 推奨される配慮内容と医学的根拠
  • 英語原本、もしくは翻訳証明付きの英文

早めに主治医に相談し、英文書類の準備が可能か確認しておきましょう。


✅ 2. 大学の障害学生支援窓口に連絡しよう

多くの大学には、**Disability Services(障害学生支援オフィス)**があります。合格が決まったら、できるだけ早く連絡を取りましょう。

英語での相談に不安がある場合は、簡単なメッセージから始めても大丈夫です:

"I have a diagnosis of ADHD/ASD and would like to request accommodations. What documents should I submit?"

メールでのやり取りやZoomでの事前面談を通じて、配慮の希望を伝える場が設けられます。


✅ 3. 自分の「困りごと」と「配慮希望」を言葉にしよう

合理的配慮は、「何ができないか」ではなく、「どうすれば本来の力を発揮できるか」を伝えることがポイントです。
以下に、具体的な困難と配慮例を、疾患ごとのイメージとともにご紹介します。


🧠 講義・学業の場面

  • ノートを取るのが難しい
     → ノートテイカーの利用/スライドの提供
     【例:ADHD、ASD】
  • 試験中に集中が続かない
     → 時間延長/静かな別室での受験
     【例:ADHD、不安障害】
  • 書くのが極端に遅い・苦手
     → タイピング許可/口頭試問の選択
     【例:学習障害、発達性協調運動障害】
  • 英語の聞き取りが苦手
     → 字幕つきの録画やスクリプトの提供
     【例:ASD、軽度知的障害】
  • 不安や体調の波が大きい
     → 出席要件の緩和/休息スペースの利用
     【例:不安障害、双極性障害】

🏠 学外生活の場面

  • ルームシェアが苦手/感覚過敏がある
     → 個室希望、静かな寮フロアの希望
     【例:ASD、CPTSD】
  • 特定の食感・匂いが苦手で食事に困る
     → 代替食や個別対応
     【例:自閉スペクトラム症、摂食障害】
  • 移動やスケジュール管理に不安がある
     → 送迎支援、緊急避難場所の案内など
     【例:ADHD、パニック障害】

🤝 対人関係・グループ活動の場面

  • グループワークが極端に苦手
     → メンバー選択の自由、役割の調整
     【例:ASD、社交不安障害】
  • 人前で話すのが難しい
     → 口頭発表の代替(録画提出など)
     【例:選択性緘黙、吃音症】

🧭 合理的配慮は「特別扱い」ではありません

合理的配慮とは、「本来の学習能力を発揮するためのサポート」です。
視力が弱い人がメガネをかけて試験を受けるのと同じ。“フェアな機会”を保障するための仕組みです。


🔗高校時代からの支援歴が、大学での配慮申請を後押しします

実は、多くの大学では「高校時代からの支援歴」が考慮されます。
在学中から支援を受けていた記録があることで、大学での配慮申請もスムーズになるのです。

だからこそ、困りごとを感じた時点で、早めに専門医を受診し、日本での合理的配慮を受けておくことが大切です。

👉 中学・高校での合理的配慮の申請方法については、こちらの記事もご参考に:
【中学受験・高校受験】合理的配慮の申請方法と注意点


💬 まとめ

海外の大学でも、あなたの「困りごと」に応じた支援を受けることは可能です。
でも、英語でのやりとり、制度の違い、手続きの煩雑さを考えると、準備は日本にいるうちに済ませておくのがベスト。

当院では、英文診断書の作成や支援希望の整理もお手伝いしています。
不安や疑問がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。

【中学受験・高校受験】合理的配慮の申請方法と注意点|現役医師がわかりやすく解説

2025.04.29

中学受験・高校受験における合理的配慮とは何か、どのような申請手続きが必要かを、現役医師がわかりやすく解説します。試験時間の延長や別室受験など、具体的な配慮内容も紹介。試験で力を発揮するための環境づくりをサポートします。

はじめに

「合理的配慮」という言葉を聞いたことはありますか?

受験の場面でも、障害のあるなしにかかわらず、すべての受験生が自分の力を正しく発揮できるように、環境を調整する配慮が求められます。

この記事では、合理的配慮の基本と、受験時における申請の流れや注意点について、わかりやすくまとめます。


合理的配慮とは?

合理的配慮とは、「障害のある人が、他の人と平等に機会を得られるようにするための支援」です。
日本では障害者差別解消法に基づき、2016年から国公立学校などで提供が義務化されています。

重要なのは、特別扱いをすることではなく、すべての人が公平に力を発揮できる環境を整えるための措置だということです。

本来、合理的配慮は障害の有無を問わず、「誰もが自分の力を発揮できるようにする社会的努力」として考えるべきものでもあります。


受験における合理的配慮の具体例

申請できる配慮内容は、受験生の特性に応じてさまざまです。たとえば:

  • 試験時間の延長
     (注意集中が困難な場合:例/ADHD〈注意欠如多動症〉など)
  • 別室受験
     (集団環境にストレスを感じやすい場合:例/ASD〈自閉スペクトラム症〉など)
  • 休憩時間の追加
     (強い不安やパニック発作が起こりやすい場合:例/パニック障害、不安障害など)
  • 読み上げ試験の実施
     (読字が困難な場合:例/ディスレクシア〈読字障害〉など)
  • パソコン入力による解答
     (手書きが極端に苦手な場合:例/発達性協調運動障害〈DCD〉、書字障害など)

※あくまで一例であり、実際には「診断名」ではなく、「本人が抱えている具体的な困難や支援ニーズ」をもとに検討されます。


配慮が必要かどうかは「一人ひとり異なる」

ここで大切なのは、
「同じ診断名でも、全員が同じ配慮を必要とするわけではない」
ということです。

例えば、ADHDと診断されている受験生でも、

  • 試験中に集中が途切れやすい人
  • 逆に試験環境では集中できる人
    では、必要な配慮は異なります。

つまり、配慮の要否や内容は、
診断名だけではなく、本人の具体的な困難さや、受験環境における影響をもとに個別に判断される
という点を忘れてはいけません。


申請のタイミングと注意点

配慮申請のタイミングにも注意が必要です。

  • 配慮申請は、通常の出願書類とは別に専用の申請書類を提出する必要があります。
  • 早い学校では、8月頃から配慮申請受付が開始される場合もあります。
  • 出願締切よりも前に配慮申請の締切が設定されていることがあるため、要確認です。

▶ 必ず志望校の募集要項を細かく確認し、申請スケジュールを逃さないようにしましょう。


申請に必要な書類

一般的に求められる書類は次の通りです。

書類内容
医師の診断書・意見書DSM-5やICD-10に準拠した診断名、障害特性、必要な配慮の根拠を記載
学校(在籍校)の意見書日常生活や学習上の配慮状況、これまでの支援とその効果について記載
本人・保護者の申請理由書なぜ配慮が必要か、本人にとってどんな意味があるかを説明

※学校によってフォーマット指定がある場合もありますので、必ず個別に確認しましょう。


まとめ

受験は、受験生一人ひとりが持っている力を正当に評価されるべき場です。
合理的配慮の申請は、そのために必要な、大切な手続きのひとつです。

診断名の有無にかかわらず、本人が抱える具体的な困難に応じた支援を整えること。
そして、必要な配慮を早めに準備し、スムーズな受験当日を迎えること。

この両方を大切にして、ぜひ未来への一歩を踏み出してください。


【あとがき】

合理的配慮を申請することは、決して「甘え」ではありません。
合理的配慮とは、特別な扱いを求めるものではなく、誰もが公平に力を発揮できる環境を整えるための社会的な努力です。

法制度上は障害のある方への義務として位置づけられていますが、
実際には、すべての人にとって大切な考え方でもあります。

どうか、必要な支援を受け取り、あなたらしい未来を切り拓いてください。

TMS治療の費用対効果:うつ病治療、"早く治す"という選択肢

2025.04.15

「TMS治療は高額?」と思われがちですが、うつ病で傷病手当を受けながら療養を続けるより、早期改善を目指す方が結果的にコストパフォーマンスが高いケースも。テスラクリニックでのTMSの費用対効果について解説します。

うつ病は「時間をかけて治すもの」と思われがちですが、本当にそれがベストな選択でしょうか?

当院・テスラクリニックでは、**TMS治療(経頭蓋磁気刺激療法)を16回コース220,000円(税込)**でご提供しています。
この金額を聞いて、「高い」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。でも、それは「費用」だけを見たときの話です。

今日は、「費用対効果」という視点から、TMSの価値を一緒に考えてみたいと思います。


傷病手当とTMS治療、どちらが“安い”?

うつ病で働けず、傷病手当を受給しながら療養されている方は少なくありません。例えば、以下のようなケースを考えてみましょう。

  • 月収:25万円の会社員
  • 傷病手当金:およそ月額18〜20万円程度(額面の約2/3)

1ヶ月あたり18万円受け取りながら療養していたとしても、それはあくまで「収入が下がった状態」での生活です。
加えて、病気が長引けば長引くほど、復職のハードルも心理的負担も大きくなるのが現実。

一方、TMS治療では、およそ3〜4週間で16回~32回のTMSセッションを集中施行し、うつ状態の改善を早期に図ることが可能です。
副作用が少なく、治療抵抗性のうつ病や服薬での改善が難しい方にも適しています。


仮に2ヶ月で職場復帰できたとしたら?

治療なしで療養が6ヶ月かかった場合:

  • 傷病手当収入:約108万円(18万円×6ヶ月)
  • 給与との差額損失:約42万円

TMSで2ヶ月で復帰した場合:

  • 傷病手当収入:約36万円(18万円×2ヶ月)
  • TMS治療費:22万円
  • 実質的な損失:約58万円 ⇒ 早期復帰により以後の月収が回復

つまり、復職が早まるだけで、給与差額がすぐにTMSの治療費を上回る可能性があるのです。


「未来に繋がる出費」か「長引くコスト」か

TMSは確かに保険適用外で、一見高額な自費診療です。
でも、それは「高額」ではなく「投資」ともいえるのではないでしょうか。

  • 長引く不調による収入減
  • 社会的孤立や将来への不安
  • 家族や周囲への負担

これらを考慮すれば、「早く良くなること」が何よりのコストパフォーマンスだと、私たちは考えています。


最後に:あなたにとっての最善の選択を

TMSがすべての人に万能とは言いません。
でも、「薬が合わない」「副作用がつらい」「できれば早く社会復帰したい」と考えている方には、有力な選択肢のひとつです。

うつ病治療は“我慢比べ”ではありません。
早く治す」という選択肢があることを、ぜひ知っていただけたらと思います。


📍テスラクリニックのTMS治療

  • 16回コース:220,000円(税込)
  • 1回あたり16分の短時間セッション
  • 専門医による個別設計・伴走支援あり

まずはお気軽にご相談ください。早期回復への第一歩を、一緒に踏み出しましょう。

ADHD治療が効かない…実は“気づかないうつ”だった? 脳波(QEEG)で見えた本当の原因

2025.04.15

ADHDの治療がうまくいかない背景には、見逃された“脳のうつ状態”があるかもしれません。QEEGによる可視化と治療のヒントを解説します。
ADHDの治療が効かないのは“脳のうつ”かも?

◆ はじめに

ADHDの診断を受け、薬も飲み、生活習慣も整えているのに、なぜか改善しない。
そんなとき、**本当の原因は“気づかないうつ状態”**かもしれません。
当院で行っている「QEEG(定量脳波)」検査によって、“こころ”ではなく“脳”の状態から原因が見えてくることがあります。

今回は、実際に「ADHDだけだと思っていた方」が、QEEGを通して別の側面に気づいたケースをご紹介します。


◆ ADHDと「うつ」は重なりやすい

ADHDと診断される方の中には、実は**気づかれていない“うつ状態”**が隠れているケースがあります。

たとえば、

  • やる気が出ない
  • ケアレスミスが多い
  • 集中できない

…といった症状は、ADHDにも「うつ病」にも共通しています。
だからこそ「ADHDと思っていたら、実はうつだった」というケースも少なくありません。


◆ 自覚のない“うつ”もある

ある患者さんの話です。
ずっと「自分はADHDだからうまくいかない」と悩んでいましたが、うつ症状の自覚はほぼなし

問診票(CES-D)でもスコアは低く、「私はうつじゃないと思います」と本人もはっきり言っていました。

ですが、脳波(QEEG)を取ってみると…
前頭葉を中心に、典型的なdepressionパターンが強く現れていたのです。


◆ QEEG(定量脳波)の可能性

QEEGとは、脳の活動パターンを定量的に見る検査です。
特定の脳部位が過活動になっていたり、逆に活動が低下している様子がわかります。

この方の場合は、

  • 注意のネットワークに異常あり
  • 同時に、うつに関連する部位での機能低下あり

つまり、「ADHDの顔をした“脳のうつ”」だったわけです。
こうした状態では、従来のADHD治療だけでは改善が難しいこともあります。


◆ 治療方針をどう変える?

QEEGの結果をもとに、治療方針を見直しました。

  • ADHD薬物療法を見直し
  • セロトニン系の調整と、脳機能を直接整えるTMS治療を検討

その結果、生活の安定度が高まり、患者さん自身も「頭の中がクリアになった」と実感されていました。


◆ まとめ:客観的指標を用いて「脳の状態」を再評価してみる

「うつだと思っていたらADHDだった」
「ADHDだと思っていたら“脳のうつ”だった」

心の問題は、ひとつのラベルでは説明できないことも多いです。
QEEGは、そんな見えない部分に光を当てるツールとして、私たちの診療にとても役立っています。


◆ ご相談ください

✔ ADHD治療をしているが効果を感じづらい
✔ 何が原因なのか、自分でもよくわからない
✔ 脳波での可視化に興味がある

そんな方は、ぜひお気軽にご相談ください。
脳の声を聴いて、より納得のいく治療を一緒に考えていきましょう。

TMS治療を考える前に読む ADHDとうつ・不安の話

2025.04.15

ADHDとうつ・不安の関係を丁寧に解説。TMS治療を検討する前に知っておきたい二次障害の視点とは?
何かがうまくいかない。でもそれは、あなたの努力が足りないからじゃないかもしれません。

ADHDの診断を受けた方の中には、
「集中できないのは昔からだけど、最近は気分が落ち込みやすい」
「些細なことで不安が止まらず、眠れない」
といった “二次的な不調” を感じている方も少なくありません。

こうしたケースでは、ADHDそのものよりも、**「うつ」や「不安障害」**といった、いわゆる二次障害への対処が、生活の質を上げる鍵になります。


ADHDの“生きづらさ”が心の調子に影響する

ADHD(注意欠如・多動症)は、生まれ持った神経発達特性です。
苦手なことが人より多く、ミスを責められたり、努力が空回りしてしまう日々が続くと、
「自分はダメだ」「どうせうまくいかない」といった考えが積み重なってしまいます。

こうして生まれる 慢性的な自己否定感や緊張状態 が、
うつ状態や不安障害に繋がることは少なくありません。


「ADHDの薬が効かない」=TMSの出番?ではない

「ストラテラ(アトモキセチン)やインチュニブを飲んでも気分が晴れない」
「コンサータで集中できるようになっても、気持ちが重いまま」

こんな訴えを聞くこともあります。

ですが、ここで**「ADHDの薬が効かない=TMSに切り替えよう」**と判断するのは、まだ早いかもしれません。

多くの場合、薬が効かないわけではなく、
今、治療すべき“主な症状”がADHDではなく、うつや不安のほうにあるのです。


二次障害を見逃さないことが、治療の近道になる

TMS(経頭蓋磁気刺激療法)は、たしかに薬が効きづらい・副作用が出やすい方にとっての選択肢になります。

しかしその前に、

  • 睡眠の質はどうか
  • 思考のクセ(過剰な自己批判や未来への不安)はどうか
  • 環境調整(働き方・人間関係など)がうまくいっているか

を丁寧に振り返ることで、薬物療法や心理療法のみで大きく改善するケースも多々あります。

TMSを使うかどうかの判断も、そういったアセスメントの先にあるべきなのです。


だからこそ、当院では「TMSありき」ではなく「全体の流れの中でTMSを使う」

当院でも、ADHDの方にTMS治療をご提案するケースはあります。
ただしそれは、「ADHDだからTMSをする」わけではありません。

うつや不安が強く、薬では十分な効果が得られず、
今この方の生活や心にとってTMSが本当にフィットしていると判断したとき
にのみ、ご案内しています。


最後に:自分の“今”を正しく知ることから始めよう

TMSは、心の回復を助ける大切なツールのひとつです。
でも、それを使うタイミングと、目的を見誤ってしまうと、
「良くならなかった」という残念な結果になりかねません。

「ADHDだけじゃなくて、最近気分も落ちてる気がする」
「TMSって気になるけど、私には合ってるのかな?」

そう思ったら、まずは今の状態を整理するところから一緒に始めましょう。
診断や治療法の選択は、ひとりで決めるものではなく、私たち医療者と一緒に考えていくものです。


📍 当院ではADHD・うつ・不安に関するご相談を受け付けています
丁寧なヒアリングと状態把握から、必要であればTMSのご提案も行っています。