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2025年05月のブログ記事一覧

仕事を辞める前に精神科を受診しないと損をする?――初診日の落とし穴とは

2025.05.26

精神科の初診日は、傷病手当や失業給付の支給開始日などの条件に影響します。仕事を休む・辞める前に必ず知っておきたい制度と受診のタイミングとは?

「仕事を辞めようかな」と感じているあなたへ

朝、職場のことを考えると胸が苦しくなったり、
涙が止まらなくなったり――
それでも何とか日々をこなしている方が、いま多くいらっしゃいます。

「このままではもう無理かも」
そう感じて初めて、休職や退職を考える方も少なくありません。

ですがそのとき、「受診のタイミング」によっては制度が使えなくなることがあるのをご存知でしょうか?

たとえば、傷病手当や失業給付などの公的制度は、**“いつ医療機関を受診したか(初診日)”**によって使えるかどうかが変わってしまう場合があります。

本記事では、知らないと損をしてしまう「初診日の落とし穴」について、できるだけわかりやすく解説します。


精神科を受診するタイミングには、制度上の“盲点”があります

私たちは日々、こんなご相談を受けています。

「体調を崩して仕事を休んだのですが、あとから病院に行っても手当はもらえるのでしょうか?」
「退職したあとに受診したのですが、傷病手当金が申請できないと言われました…」

このようなケースでは、医療機関を受診した“日付(初診日)”が重要な意味を持つことがあります。


制度上、初診日によって受けられる保障が変わることがあります

【傷病手当金申請】

  • 初診日が仕事を休む前にあることが原則。
  • 休職後に初診を受けた場合、傷病手当申請の対象外になる期間が生じる可能性があります。

【特定事由休職者としての失業給付】

  • 精神的・身体的な理由による退職で、退職前から治療を受けている場合に適用されやすくなります。
  • 退職後の初診となった場合、一般の自己都合退職とみなされることがあり、必要な給付を受けられなくなる可能性があります。

「病院に行くのはまだ早いかも…」と思っている方へ

精神科の受診は、なにも「すぐに診断書を書いてもらう」ためのものではありません。

・今の状態を整理してみたい
・自分にどんな選択肢があるか知りたい
・少し話をして、気持ちを落ち着けたい

そうした思いで受診される方がたくさんいらっしゃいます。
診断や薬が前提ではありませんし、相談だけでも構いません。


大切なのは、「適切なタイミングで、必要な支援につながること」

受診は、休職や退職を勧めるためのものではありません。
けれども、いざというときに制度を使える状態にしておくことは、結果的に自分を守ることにつながります。

当院では、そうした「まだ迷っている」「でも、少し相談してみたい」という方の初診も受け付けています。
オンライン診療も可能ですので、安心してご相談ください。

海外の大学で合理的配慮を受けるには?

2025.05.12

発達障害や不安障害、学習障害などを抱える学生が、海外の大学に進学する機会は年々増えています。
でも、いざ現地で「講義についていけない」「試験がうまく受けられない」と気づいたとき、サポートを申し出るには、英語での説明や専門的な書類の提出が必要になります。

もちろん、海外でも支援を受けることは可能ですが、言語や制度の壁を考えると、日本での準備が圧倒的に有利です。
この記事では、海外の大学で合理的配慮を受けるために必要な3つの準備と、実際に申請できる具体的な配慮内容をわかりやすくご紹介します。


✅ 1. 英文診断書・主治医意見書を準備しよう

合理的配慮を受けるためには、医療的根拠を示す診断書や意見書が必要です。以下の項目が含まれることが望ましいです。

  • 診断名(DSM-5/ICD-10に準拠)
  • 学業や生活での困難の具体例
  • 推奨される配慮内容と医学的根拠
  • 英語原本、もしくは翻訳証明付きの英文

早めに主治医に相談し、英文書類の準備が可能か確認しておきましょう。


✅ 2. 大学の障害学生支援窓口に連絡しよう

多くの大学には、**Disability Services(障害学生支援オフィス)**があります。合格が決まったら、できるだけ早く連絡を取りましょう。

英語での相談に不安がある場合は、簡単なメッセージから始めても大丈夫です:

"I have a diagnosis of ADHD/ASD and would like to request accommodations. What documents should I submit?"

メールでのやり取りやZoomでの事前面談を通じて、配慮の希望を伝える場が設けられます。


✅ 3. 自分の「困りごと」と「配慮希望」を言葉にしよう

合理的配慮は、「何ができないか」ではなく、「どうすれば本来の力を発揮できるか」を伝えることがポイントです。
以下に、具体的な困難と配慮例を、疾患ごとのイメージとともにご紹介します。


🧠 講義・学業の場面

  • ノートを取るのが難しい
     → ノートテイカーの利用/スライドの提供
     【例:ADHD、ASD】
  • 試験中に集中が続かない
     → 時間延長/静かな別室での受験
     【例:ADHD、不安障害】
  • 書くのが極端に遅い・苦手
     → タイピング許可/口頭試問の選択
     【例:学習障害、発達性協調運動障害】
  • 英語の聞き取りが苦手
     → 字幕つきの録画やスクリプトの提供
     【例:ASD、軽度知的障害】
  • 不安や体調の波が大きい
     → 出席要件の緩和/休息スペースの利用
     【例:不安障害、双極性障害】

🏠 学外生活の場面

  • ルームシェアが苦手/感覚過敏がある
     → 個室希望、静かな寮フロアの希望
     【例:ASD、CPTSD】
  • 特定の食感・匂いが苦手で食事に困る
     → 代替食や個別対応
     【例:自閉スペクトラム症、摂食障害】
  • 移動やスケジュール管理に不安がある
     → 送迎支援、緊急避難場所の案内など
     【例:ADHD、パニック障害】

🤝 対人関係・グループ活動の場面

  • グループワークが極端に苦手
     → メンバー選択の自由、役割の調整
     【例:ASD、社交不安障害】
  • 人前で話すのが難しい
     → 口頭発表の代替(録画提出など)
     【例:選択性緘黙、吃音症】

🧭 合理的配慮は「特別扱い」ではありません

合理的配慮とは、「本来の学習能力を発揮するためのサポート」です。
視力が弱い人がメガネをかけて試験を受けるのと同じ。“フェアな機会”を保障するための仕組みです。


🔗高校時代からの支援歴が、大学での配慮申請を後押しします

実は、多くの大学では「高校時代からの支援歴」が考慮されます。
在学中から支援を受けていた記録があることで、大学での配慮申請もスムーズになるのです。

だからこそ、困りごとを感じた時点で、早めに専門医を受診し、日本での合理的配慮を受けておくことが大切です。

👉 中学・高校での合理的配慮の申請方法については、こちらの記事もご参考に:
【中学受験・高校受験】合理的配慮の申請方法と注意点


💬 まとめ

海外の大学でも、あなたの「困りごと」に応じた支援を受けることは可能です。
でも、英語でのやりとり、制度の違い、手続きの煩雑さを考えると、準備は日本にいるうちに済ませておくのがベスト。

当院では、英文診断書の作成や支援希望の整理もお手伝いしています。
不安や疑問がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。