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2024年06月のブログ記事一覧

TMS治療とは

2024.06.15

経頭蓋磁気刺激法(けいとうがいじきしげきほう、英: Transcranial magnetic stimulation、TMS)は、主に8の字型の電磁石を使用して急激な磁場の変化を生み出し、ファラデーの電磁誘導の法則によって脳内に弱い電流を誘導することで、脳のニューロンを非侵襲的に興奮させる治療法です。この方法は、うつ病や頭痛、脳梗塞、パーキンソン症候群、ジストニア、耳鳴りなど、多くの神経症状や精神医学的な症状に対して有効であるとされています。

TMSにはいくつかの異なる形式がありますが、特に反復経頭蓋磁気刺激方(rTMS)は、脳に長期的な変化を与えることができるとされています。

安全性に関しては、TMSは一般的に安全な治療法とされていますが、頭痛やごくまれに、けいれんなどの副作用が報告されていることもあります。治療を受ける際には、医師としっかりと相談し、適切な情報を得ることが重要です。

TMS治療はどうして効果が出てくるのか?

近年の研究では、脳の試験可塑性を誘導することでシナプスの活動状態を改善させるとこがわかりました。脳の神経可塑性(brain neuroplasticity)とは、脳が経験に応じて変化する能力を指します。脳は神経細胞のネットワークで構成されており、そのネットワークは学習や記憶の形成に応じて、つながり方や機能が変化します。このような神経可塑性は、脳の発達や修復に重要な役割を果たします。

うつ病を発症している方や、発達障害の方は神経可塑性が弱いため、TMS治療で磁気を当てることで脳の神経細胞の電流が流れやすくなるようにし、神経可塑性を修正します。脳のバランスの崩れを整えることができ、神経の結びつきの柔軟さが回復してくると考えられています。

左脳にTMSを当てた時に期待される効果

反芻思考(ぐるぐる思考)の改善

固定観念、こだわりの改善

不安、不眠、過眠の改善

感覚の過敏の改善

気持ちの切り替えやすさ(まあいいかという感覚を起こりやすくする)

右脳のTMSを当てた時に期待される効果

コミュニケーション能力の改善

緊張の緩和

衝動性の改善

気分の浮き沈みの緩和

メタ認知能力(自己の認識を更に理解する)の改善

集中力、注意力の改善

後回し癖の改善

ディスレクシア(発達性読み書き障害)、ディスグラフィア(書字障害)の改善

TMS治療のメリット

このような方におすすめです

TMS治療は基本的に保険適応外の治療のため、精神疾患をもっているからといって全員におすすめというものではありません。しかし、治療効果の高さや副作用の少なさから、以下のような方におすすめです。

・副作用などが理由でお薬を減らしたい方、なるべく使用したくない方

・治療期間を短期間にとどめたい方

・お薬での治療の効果が難渋しており、他の治療方法を試してみたい方

・なるべく早く治療して、治療期間を短くし、仕事への復帰を早くしたい方

TMS治療中は座っているだけ

治療中、患者様は専用チェアーに座っているだけです。治療の際には頭部にコイルを固定しますが、位置がずれないように少し押し込むように当てます。

刺激強度を探しているときには、刺激に伴って痛みが出てくることは非常に少ないです。刺激を行っているときは、刺激音(ペンでコツコツと叩くような感覚)が生じます。

治療中に眠ると効果が弱まってしまうので、刺激中は眠らないようにしてください。

  • 施術の準備:専用チェアーに座り、刺激部位と強度を同定します。
  • 刺激部位の決定(初回のみ):効果を最大化にするため、最適な刺激部位を同定します。
  • 刺激強度の決定(初回のみ):刺激部位が同定できたら、適切な刺激強度を測定します。
  • 治療開始:治療中、患者様は専用チェアーに座っているだけです。

TMS治療のデメリット

週に1回から3回程度治療を受けなくてはいけない。治療時間は1回16分程度ですが、

薬物療法の月1回や2回の受診とは違い、治療頻度が高い。

物理的に受けられない方もいる(禁忌)

刺激部位に近接する金属(人工内耳、磁性体クリップ、深部脳刺激・迷走神経刺激などの刺激装置)、心臓ペースメーカーを有する患者。

刺激部位に近接しない金属(体内埋設型の投与ポンプなど)、頭蓋内のチタン製品、あるいは磁力装着する義歯・インプラントを有する患者。てんかん・けいれん発作の既往、けいれん発作のリスクのある頭蓋内病変、けいれん発作の闘値を低下させる薬物(メチルフェニデート、ケタミンなど)の服用、アルコール・覚せい剤の乱用・離脱時、妊娠中、重篤な身体疾患を合併する場合など。

治療費が高い

日本では2019年に重度のうつ病に対するTMS治療が保険適応診療として認定されましたが、それ以外は保険適応外になります。

最後に

TMS治療は、うつ病やその他の神経系の障害に対する有望な治療法として注目されています。この治療法は、薬物療法に比べて副作用が少なく、多くの患者さんにとって効果的な選択肢となり得ます。治療期間や頻度、そして個々の症状に合わせたカスタマイズが可能であるため、患者さん一人ひとりのニーズに応じた治療が行える点も大きな利点です。今後もTMS治療の研究と臨床試験が進むにつれて、より多くの人々がこの治療から恩恵を受けられることを期待しています。