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2024年03月のブログ記事一覧

休職中にやってはいけないこと

2024.03.31

休職中は、前半と後半に分けて考えることができます。

前半:休職直後からしばらくの期間です。この時期は、体調の変化に戸惑いを感じることがよくあります。精神的にはとても辛い時期で、仕事から離れて心身を休める大切な時期です。

後半:しっかりと休息を取った後、社会に復帰するための準備期間になります。この期間は、仕事に戻るための心構えや調整を行うことが重要です。

しかし、休職中にやってはいけないことをしてしまい復帰までの期間が長引いてしまうケースもあります。ここで紹介する休職中にやってはいけないこと、おすすめの過ごし方を参考にしてみてはいかがでしょうか。

休職直後にやってはいけないこと

仕事のことばかり考える

休職して間もない場合にしばしばとってしまいがちな行動のひとつとして、「仕事のことばかりを考える」という行動が挙げられます。

休職直後は、自分が抜けた仕事のことや進めていたプロジェクトの進捗状況、または取引先とのやり取りなど、つい仕事のことばかりを考えてしまうケースが多くみられます。

スマートフォンやパソコンで仕事のメールを確認できる場合は、ふとした瞬間にメールをチェックしてしまうということもあります。休職前までは毎日のように行っていたことであるため、そのような行動を取ってしまうことも仕方のないことかもしれません。とはいえ、仕事のことばかりを考えていると、「引継ぎに問題はなかったか」「ミスなどはなかったか」と不安になったり、休職に至る原因となったことなどを思い出して体調が悪化する可能性があります。

特に休職して間もない場合は、仕事のことを考えることで体調不良の引き金となるケースが多くあります。そのため、休職初期はできるだけメールチェックなどは控えて、仕事から離れる意識を持つことが大切です。

仕事のことばかり考えてしまうのは、それだけ責任感を持って仕事に取り組んでいた証といえます。そうであれば、引継ぎも問題なく行えたと割り切って考えることも大切です。仕事のことは考えず、まずは自分自身の心身の健康を最優先に考え、休職期間を過ごすようにしましょう。それが結果的に、自分のためにも会社のためにもなります。

とはいえ、定期的に会社と連絡を取り合っている場合は、それを無理にやめる必要はありません。無理のない範囲で、時間が空くたびに仕事のことを考えたり自分から進捗を確認することなどを控えることが大切です。

休職原因を分析する

休職後、間もない方がしてしまいがちな「休職原因を分析すること」です。確かに、休職期間中に実践するべきこととして休職原因の分析が挙げられますが、休職直後の取り組みとしては必ずしも適切ではありません。

休職原因は、不調になった原因と直結していることが多くあります。そのため、まだ体調が安定していない休職直後に原因の分析を行うと、休職前のことを思い出して体調が悪化したり復職への不安が強くなってしまう可能性があります。また、まだ自分の体調や現状を客観視できず、正しい分析ができないというケースもみられます。こうした理由から、休職原因の分析は体調が安定して仕事のことを考えても落ち着いた状態でいられるときに実施する必要があります。

休職して間もないうちは、焦らずに十分な休養をとって良い精神状態を作るための安定した生活習慣を維持することが大切です。

焦って復職準備をする

休職後、間もない方がしてしまいがちな「焦って復職準備をすること」です。休職中は、「本当に復職できるのか」と焦りや不安を感じてしまいがちです。特に休職初期は、これまで毎日行っていた日々の仕事がなくなり、不安を感じやすくなります。そのため、休職して間もないうちから休養をとらずに復職準備に取り掛かる方もいます。しかし、こうした活動は却って休職期間を伸ばす原因となりかねません。まずはしっかりと休養し、心身の健康を回復させることが大切です。規則正しい生活習慣を送り、安定した状態を維持できるような過ごし方を優先しましょう。

休職期間中、復職準備を頑張りすぎて十分な休養がとれない場合や、夜遅くまで勉強をしていて生活習慣が乱れている場合は、体調は回復するどころか悪化してしまう可能性があります。

また、休職後に少しの間だけ休養をとり、少しずつやる気が出てきたという場合も注意が必要です。元気になってくると、ついつい「あと少しだけ」「もう少しなら」と頑張ってしまうことがあります。頑張ることで復職が早まると考えてしまいがちですが、こうした考えが逆効果になるケースもあります。

自分の体調が許す範囲で少しずつ復職準備を進めることは大切ですが、頑張りすぎてしまうと自分でも気付かないうちに疲労が蓄積され、症状の悪化につながることもあります。休職期間中は初期段階に限らず全期間を通じて、そして復職後も夜遅くまで頑張ることは避け、規則正しい生活リズムを維持することや、活動と休職のメリハリをつけることを意識するようにしましょう。

過度な飲酒、喫煙

職場から離れ、何もしない時間が増え、さらにイライラしてくると飲酒や喫煙の量が増えてしまうことがあります。多量のアルコールの摂取は睡眠の質を悪くし、体の回復が遅れる可能性が高いので、療養中の飲酒は適量に留めてください。喫煙も生活習慣業の一因となるため、会社に勤めていた頃より喫煙の量が増えた場合は注意が必要です。気晴らしに外の空気を吸いに散歩に出るなどしてストレスを緩和するようにしてください。

人生の決断、転職

療養の前半は心の状態が安定せず、過度に悲観的になることもあります。「今は冷静な判断ができない時期だ」という認識を持っておいてください。

まれに思い詰めてしまい、「これ以上会社に迷惑をかけられないから明日辞表を出しに行こう」「こんな自分と一緒では家族に迷惑をかけるから離婚したほうがいい」などという考えが浮かび、本当にそのように行動してしまう人もいます。

転職についても同様です。療養中は自分で思っている以上に体力・判断力が落ちていることがあります。もし焦って転職し、新しい職場が決まったとしても、自分が思っていたように体も頭も動かず、「こんなはずではなかったのに…」という結果が続き、新たな精神疾患になることも考えられます。

くれぐれも、人生を左右するような大きな決断はまだせず、体と心を休ませることを最優先にしてください。

療養が長引くことを恐れ、主治医に本当のことを伝えない

「早く復帰したい」「調子が悪いというと怒られそう」「主治医を前にする緊張して上手く話せない」

などの理由から、主治医に本当のことを伝えない(もしくは伝えられない)と、治療が上手く進まないことがあります。

精神不調はレントゲンや機器で測定できるものではなく、本人が話す内容をもとに医師が病状を診断します。ですから患者は、医師に症状をきちんと伝える必要があります。緊張して話がまとまらない時は、日ごろから自分の体調を記録しておいたものを見せるとよいと思われます。

休職前半におすすめの過ごし方

心と身体を休ませる

休職したばかりの時期なら、あなたは「職場の人が働いているのに自分だけ休んでしまって申し訳ない」「ただ休んでいないで、何かしたほうがいいのでは」という気持ちを感じるかもしれません。しかし、医師から「治療に専念することが必要」と診断され休職になっているのですから、まず心身をゆっくり休ませてください。頑張ってきた人ほど、職場に穴を開けたと自分を責めてしまいますし、ハードな職場から抜けてきた場合「残された社員は大丈夫だろうか」と心配になりますが、それは人員の調整などをする立場の上司が考慮すべきことで、あなたが心配することではありません。まずは自分の治療に専念してください。

うつ状態などがある場合、毎日徐々によくなっていくというより、調子がいい・調子が悪いを繰り返しながら段々とよくなっていきます。調子がいい日が何日か続いたからといって活動量を増やすのはハイリスクです。特に復職や転職の準備については「この様子ならもう大丈夫だろう」と自己判断せず、主治医に相談して始めるようにしてください。

医師の指示に従って治療する

うつ病などの精神疾患で休職した場合、医師の指示に従って薬物治療をします。この時、症状が落ち着いてきても自己判断で服薬をやめるのは危険です。服薬によって症状が抑えられているから落ち着いているのであり、服薬をやめると再度症状が悪化する恐れがあります。

また、医師の指示がなく自己判断で服用をやめると、思わしくない症状が出たり、病気の慢性化の原因にもなります

 休職後半

不調から来ていた症状が治まり気持ちが前向きになり始めたら、徐々に生活リズムを整えリハビリを始めます。この時期にしてはいけないこと、するとよいことを解説しますが、ここでも前提として「医師が指示した治療を続ける」ことが必要です。

 休職後半にやってはいけないこと

長期間の旅行

外出はリハビリの一環ともいえるので、休職期間中に療養で温泉に出かけたり、実家で1か月ほど療養するのは休職の目的の範囲内の行動として考慮されることがあります。

しかし、1週間などの旅行となると話は別です。このようなことが見つかった場合は、会社から事情聴取される可能性があります。休職する場合、傷病手当金を受け取るケースが多いのですが、長期間の旅行に行けるという状態は、就労可能な状態とみなされるので、傷病手当金の不正受給の可能性も出てきます。休職中に長期間の旅行などには行かないようにしてください。

また、主治医と相談した上で適切な判断を行ってください。

治療の中断

休職中に自己判断で薬を飲むのをやめることは、症状の悪化や再発を引き起こす可能性があります。定期的に医師と相談し、治療計画に従ってください。薬の調整や中断が必要な場合は必ず医師の指示に従ってください。

休職後半におすすめの過ごし方

休職前の生活リズム・体力に戻す

低下した体力の回復のため、まずは散歩等の軽い運動を始めてみましょう。療養前半は日中も横になり、眠っていることが多いかと思います。療養前半は体力の回復を優先すべきなので、「食事の時間がバラバラ」「生活リズムが狂ってしまった」といったこともさほど問題はありません。

しかし、体力が戻りはじめたら、徐々に生活リズムを就業時のリズムに戻すことがリハビリの第一歩です。

散歩にでて、近所の図書館へ行き読書をするなど、少しずつ体と頭を使うことを増やしていきます。特に、午前中から毎日決まった場所(カフェや図書館、少し離れた距離のある公園など)へ出かける習慣も生活リズムを作る上でよいと思われます。

休職に至った原因を振り返る

これは回復してきたらで構いません。仕事から離れ時間が経つと、休職前の状態が客観的にみられるようになってきます。自分にとって何が一番ストレスだったのか?どうしたらその状況を改善できるか?業務内容が原因なのか?人間関係が上手くいかなかったのか?

これらをゆっくりで構いません。紙に書き出し、少しずつ整理してみてください。自分の考え方の癖、行動の癖などが見つかり、復職後の再発防止にもつながります。

自分に適した働き方を考える

上司や人事との面談の結果、復職後に配置転換になるかもしれません。

復職の面談際には「どの業務はできて、どの業務は外れるべきか」「今後も同じ業務をするならどのように対処するか」ということを話すことになります。ですから、上記の様に何が自分にとって負担だったのかを振り返り整理したことがとても役立ちます。

また、復職後には時短勤務など、慣らし出勤などの制度があれば活用して、無理なく仕事に慣れることを優先しましょう。

リワーク制度(復職支援)を活用してみる

「そもそも、自分にあった仕事が分からない…」「何度も休職を繰り返してしまっている…」「復職準備ができているのか不安になる」といった悩みがあるなら、リワークを活用してみるのがおすすめです。

生活リズムを整えながら復職に向けての心理面・スキル面のリハビリをすると同時に、休職になった時の振り返りをし、再休職防止への取り組みができます。また、仕事のスキルアップにつながるようなプログラムが提供されることもあるので、リワークをつかうことで休職期間がより有意義なものになると思われます。

最後に

休職期間は、まずは心身の休養に専念することが重要です。休職が進むにつれて、心に余裕が生まれ、自分自身と向き合う時間も増えるでしょう。日常の忙しさから離れて、これまで考える機会がなかった自分の将来の働き方や生き方について深く考えることができます。この記事が、休職期間を充実したものにするためのお役に立てれば幸いです。

精神科と糖尿病の意外な関係

2024.03.17

厚生労働省が定める医療計画において、五大疾病とは、がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病、精神疾患を指しています。現代の日本社会においていずれも重要な健康問題です。当院は精神科・心療内科ですので、精神疾患の患者様が多くご来院されますが、中には糖尿病を合併されている方もいます。

糖尿病の合併症にはなにがあるかご存知でしょうか?

3大合併症として、網膜症(網膜とは目の構造の一部です)、腎症、神経障害があります。その他にも脳卒中や虚血性心疾患など挙げればキリがないほどの合併症があります。その中でも心の病気と糖尿病の以外な関係があることをご紹介させていただきます。

たとえば、糖尿病患者はうつ病になりやすく、またうつ病患者も糖尿病になりやすいといわれています。

うつ病になると、血糖値のコントロールがむずかしくなり、糖尿病や脂質異常症の合併症が多くなりますので、うつ病を早期に発見し適切な治療を受けることが重要です。

糖尿病は国民の10人に1人といわれる国民的な病気です。早期は自覚症状がないため気づかなかったり、検査で血糖値が高く治療が必要といわれても治療を受けなかったりする人が多く、糖尿病で治療を受けている人は全体の半分弱にすぎないと推定されています。しかし糖尿病によって年間約1万5千人が死亡し、糖尿病による腎症で年間約1万5千人が人工透析を始め、年間約1,000人に糖尿病による高度の視力障害(失明など)が発生しています。このような合併症を起こさないようにするためには、血糖値に注意しながら生活習慣を改善する必要があります。

また、精神科で処方される一部の薬剤は、血糖値に影響を与えることが知られています。例えば、一部の抗精神病薬は体重増加やインスリン抵抗性を引き起こす可能性があり、これがリスクを高めることがあります。

糖尿病とうつ病との関係

これまでの調査によると糖尿病の約30%にうつ症状があるといわれ、糖尿病とこころの問題が重要視されるようになっています。糖尿病患者の13%は不安障害、11%はうつ病と診断され、5.7%は抗うつ薬を服用しているとの報告もあります。両者の関係について、神経系・内分泌系および免疫系の相互関係の研究がすすめられていますが、行動上の要因も大きいといわれています。

従来は、糖尿病と診断されることや糖尿病の治療(これまでの生活習慣を変えなければならなかったり、インスリン治療を始めなければならなかったりすることなど)、合併症の発症・進行などに伴うこころやからだの苦痛のために、糖尿病のある方はうつ病になりやすくなるのではないかと考えられてきました。最近では、糖尿病とうつ病の間にはよりさまざまな要因が関与する、複雑な関係があるのではないかと考えられるようになってきています。

糖尿病を自分で管理しなければならないことや、治療を続けなければならないこと、がんばっていたとしても合併症になるのかという不安が出てきたり、合併症を発症すると自由に行動できなくなったりと、すべてのことが心の負担となってきます (糖尿病に伴うストレスといいます) 。

一方で、うつ状態になると、過食になったり、嗜好が変わったり、毎日の行動が減少したり、内服薬・インスリンなどの注射を忘れやすくなった結果、HbA1c 値が悪化し、合併症を発症しやすくなることがあります。これらがまた気持ちをうつにしてしまいます。

糖尿病の合併症などのリスク上昇

糖尿病とうつ病を併発すると、生活の質が低下するばかりでなく、深刻な影響がでます。死亡率が1.6倍上がり、医療費は4.5倍に膨れ上がります。また糖尿病の合併症である神経障害・腎症や網膜症が起きやすくなり、またそれらの合併症が悪化する危険性が高まります。

うつ病になると、こころの面だけでなく、からだの面にも症状が出てきます。例えば、ホルモンや自律神経など、からだの働きを調節するさまざまな機能に不具合が生じます。このうち、糖尿病に関係する変化として、インスリンの作用が弱くなる(インスリン抵抗性)と考えられています。

そればかりではなく、うつ病になると意欲や集中力が低下し、予約どおりに通院したり、お薬を定められたとおりに服用するといった糖尿病の治療に必要な行動が行えなくなったり、健康的な食生活や身体活動量を保つことが困難になったり、喫煙量やアルコール量が増えるなど、糖尿病の悪化を招く悪循環に陥りやすくなります。

このような状態が長期間続くと、高血糖や低血糖のために緊急に医療機関を受診する機会が増えたり、糖尿病の合併症がすすみやすくなったりします。さらには健康なからだを維持していられる期間(健康寿命)が短くなったり、医療費の負担が増加したりするとも言われています。

糖尿病のある方ではからだの健康に加えてこころの健康にも気を配ることが大切なのです。

対処のポイント -うつ病を見逃さない

糖尿病とこころの問題が同時に起こったときは、まず両者が重なっていることを理解しなければなりませんが、糖尿病とうつ病を併発している患者の約半数は、「うつ病」になったことに気づいていないといわれています。うつ病は、こころの不調だけではなく、からだの不調として表れることもあります。からだの不調が糖尿病によるものなのか、うつ病のためなのか、判断が難しいこともうつ病に気づかない理由のひとつと考えられます。

糖尿病とこころの問題が同時に起こったときは、まず両者が重なっていることを理解しなければなりませんが、糖尿病とうつ病を併発している患者の約半数は、「うつ病」になったことに気づいていないといわれています。うつ病は、こころの不調だけではなく、からだの不調として表れることもあります。からだの不調が糖尿病によるものなのか、うつ病のためなのか、判断が難しいこともうつ病に気づかない理由のひとつと考えられます。

うつ病の症状(からだの不調)

  • 体重が減った
  • 食欲がない
  • 眠りすぎる
  • 動きや話し方が遅くなった
  • 性欲が減った

うつ病の症状(こころの不調)

  • 悲しい気持ちが消えない
  • 以前は楽しめていた活動に興味を持てない、楽しめない
  • 集中することや、物事を決めることが難しい
  • 自分を大切に思えない
  • 失敗したわけではないのに罪悪感がある
  • 死にたいと思う

このように精神科と糖尿病は密接に関連していると言えます。定期的な健康診断と生活習慣の改善により、糖尿病およびその合併症の予防と管理に取り組むことが重要です。自分の健康に責任を持ち、積極的にケアを行うことで、糖尿病およびうつ病の影響を最小限に抑えることができます。

新生活とうつ

2024.03.09

新生活とうつ 本格的な寒さも終わり、木々が新芽を吹く季節を迎えました。

本来なら心が浮き立つ春が到来したというのに、メンタル不調を訴える人が多いのもこの時季の特徴です。

春先を“木の芽どき”と呼ぶ言い方は古くからあり、俳句の季語にもなっています。文字通り木の芽が出て虫たちが活動を始める時期なので、ポジティブに捉えられそうなものですが、そうではありません。
この言葉は、昔から「身体的精神的にバランスを崩しやすいので、病気に注意するべき時期」という意味でも、言い伝えられてきたのです。
医療現場でもこの時期は、うつ状態に陥る人が現れたり、認知症の行動・心理症状(徘徊、不穏、興奮など)が悪化したり、不定愁訴(ふていしゅうそ/器質的な原因が見つからないのにさまざまな不調を自覚して訴える状態)が多発する時期でもあります。
木の芽どきに起こる不調は、一過性のものだからと看過してはいけません。不調の原因を把握し、しっかり対策を立てることが必要です。

就職、入学あるいは会社で昇進した…など、環境が変わるとうつ病を引き起こしやすくなります。新しい環境に十分になじむまでのストレスを感じることが、うつ状態やうつ病のきっかけになることは少なくありません。

新生活が始まると、多くの人は気持ちを新たにし、自分自身に期待をかけます。それがうまくいかないと、『頑張りが足りないからだ。もっと頑張らなければ』と考え、さらに自分を追い詰めて不調になる人たちもいます。過度にがっかりせず、気持ちを楽にしましょう。

どのような対策をとればよいのでしょう?

この時期に心身の不調を感じたら、心の状態もよく見直してみましょう。

ストレスの多い現代社会で心の健康を保つためには、よい意味での『適当さ』や『遊び』が必要です。食事、睡眠、休養、運動などの生活習慣を整えることも、心の健康を維持する基盤となります。

いつもと違う不調があり、長引くようなら、心療内科や、精神科を受診しましょう。小さなストレスが積み重なり、うつ症状やうつ病のきっかけになることは珍しくありません。

不眠や胃痛、下痢等の消化器症状が出現すれば内科を受診し、胃薬や睡眠導入剤などを処方される。あるいは、春は花粉症とも重なるので、全身の不快症状をアレルギーと誤解して抗ヒスタミン薬を処方されることもあるかもしれません。これによりまた、うつ状態をこじらせたり、早期発見を遅らせたりすることもあります。

身体が不調なときには心も大丈夫?と自分で問いかける習慣が重要です。家族同僚、後輩などもそういう視点で見守ってあげたいところです。

もちろん新しい環境におかれ多少のストレスを自覚することは、人間の防御機能として当たり前の作用で、それがすべてうつ病につながるというわけではありません。

グレーゾーンの「うつ状態」が「うつ病」へと進行しないためには、十分な休養と早期受診が有効です。

うつ状態が長く続くと、睡眠障害や食欲不振といった身体的症状がではじめます。眠れない、眠っても目覚めてしまう、食欲がない、胃痛や下痢などの消化器症状が続く、倦怠感などから仕事を欠勤、学校を欠席するようになると、うつ病を心配しなければなりません。精神科や心療内科を早めに受診するほうが、うつ症状を長引かせるよりは早めの改善が期待できます。ですが、精神科を受診することに抵抗感がある方も少なくないと思います。

睡眠障害がではじめて2週間以上、欠勤ないし欠席が続くようになったタイミングで、精神科や心療内科の受診をおすすめします。

以前は抗うつ薬の中には強い副作用(吐き気、下痢、不眠、性機能障害など)がありましたが、近年の治療薬の進歩によりほとんど副作用のないものも出てきました。ただし効果が出るまでには2~3週間程度かかることがネックになります。

当院では、内服をしないうつ病治療rTMS(反復的経頭蓋磁器刺激法)を取り入れています。頭に直接、強力な磁気をあて、刺激を与えること脳の機能低下を改善することを目的とした治療法です。

脳に直接刺激を与えるという治療に不安がある場合、治療そのものをいったん終了することができます。その点も体内に残る抗うつ剤治療とは違う点です。

うつ病患者の脳を画像診断すると、脳への血流量が著しく低下しているのがわかります。特に、人間の感情や人格を支配する前頭葉への血流量の低下と機能低下といった、共通所見がみられます。

rTMS治療は前頭葉の一部分に磁気をあてて刺激を与えることで、前頭葉の活動を活性化させる一方、前頭葉の機能低下を補うためにオーバーヒートしている脳の扁桃体という部位の過活動を抑え、脳機能のバランスを取り戻しうつ病を改善させていきます。

rTMS治療はうつ病治療の有効な選択肢の一つであり、利点としては薬物に頼らなくて済むこと、副作用がないことです。最近の抗うつ剤は、以前よりも副作用は少なくなったものの、それでも一定の副作用は生じるので、長期間にわたり内服しづらいという欠点もあります。内服治療を続けても、うつ病の10~20%は慢性化してしまうという投薬治療の限界もあります。

rTMS治療の利点は体の負担は少なく、即効性があるということです。うつ病治療は本来であれば中途半端にすることなく、学校や勤務先を休んで、しっかりと治療に専念することが望ましいのですが、外来でrTMS治療を受け日常生活を維持しながら加療できる場合もありますので、お気軽にご相談ください。

最後に

こころの病気は、本人が苦しんでいても、周囲からはわかりにくいという特徴があります。私たちは、病気や怪我をした人には「無理はしないでね」と、自然に声をかけることができます。しかし、こころの病気の場合は、外から見ても気がつかないことがあり、知らないうちに無理なことをさせたり、傷つけていたり、病状を悪化させているかもしれません。

私たちみんながこころの病気を正しく理解することはとても大切です。

あなたは一人ではありません。

どんな些細なことでも当院までご相談ください。