2025年02月のブログ記事一覧
東洋医学とデータサイエンス・AIが実は相性良いという話
2025.02.28
こんにちは。今回は「東洋医学とAI・データサイエンスの相性」についてご紹介します。最近はAIをはじめとしたテクノロジーがいろいろな分野で活躍していますが、実は東洋医学の世界でも注目されているんです。いったいどういう仕組みで、どんなふうに役立っているのか、わかりやすくお話します。
そもそも東洋医学って?
東洋医学は古代中国や東アジアで発展してきた医学の総称で、漢方、鍼灸、推拿(すいな)などさまざまな治療法があります。特徴的なのは「全身のバランスを整える」という考え方。病気の原因を一部だけでなく、生活習慣や体質などを含めて総合的に見るのがポイントです。
具体的な診断には「四診(ししん)」と呼ばれる方法が使われます。四診とは、
- 見た目をチェックする「望診」
- 声や臭いを聞く「聞診」
- 患者さんへの質問(問診)
- 脈を触ったりお腹をさわったり(切診)
これらによって証(しょう)と呼ばれる体質や症状のタイプを判断し、その人に合った治療法を選ぶのです。

AIやデータサイエンスとどう関わるの?
ここでAIやデータサイエンスが登場します。AIはコンピューターに大量のデータを学習させ、パターンやルールを見つけ出すのを得意としています。たとえば、東洋医学には数千年分の膨大な文献やカルテがあり、これらを人が全部読むのは大変ですよね。そこでAIが過去のデータを分析して、どんな症状にはどの漢方薬や鍼灸が効果があるのか、証のタイプはどんなパターンが多いのかなどを見つけてくれます。
1. AIが診断を手伝う?
舌の写真をAIが解析して、わずかな色の違いまで判別したり、脈波を読み取って患者さんの体の状態を数値化する研究も進んでいます。これによって医師の勘や経験だけに頼るのではなく、客観的なデータも加えて診断をサポートできるようになるのです。
伝統的な中医学TCMとAIの融合:シンガポールのシンクタンクが発行したニュースレター
2. ぴったりの漢方薬を提案
漢方薬にはいろいろな生薬(生薬=自然由来の薬草や鉱物など)が組み合わさっていますが、その組み合わせ方は非常に奥が深いもの。AIを使ってこれまでの多くの処方データや文献を分析し、患者さんの症状や体質に合った漢方薬を提案してくれるシステムも研究・開発されています。
漢方もDX 患者に応じた診断支援AI 診療支援ソフト「KAMPO365works」
3. 経験の継承と標準化
東洋医学では、熟練した医師や鍼灸師の経験や勘が重要とされてきました。しかし、この「職人技」を後世に正しく継承するのは大変です。AIが膨大なカルテや施術データを整理すれば、「どんな症状には、どのツボへの鍼が有効だったのか」などの知識を誰でも活用できるようになり、東洋医学全体の底上げが期待できます。
実際の事例をいくつかご紹介
- 漢方処方の最適化: 日本では、医師の問診情報から患者さんの証をAIが自動判定して、候補となる漢方薬を提案してくれるシステムが開発されています。これがあれば、漢方に詳しくない医師でも比較的簡単に患者さんに合った処方を選べるかもしれません。
- 鍼灸データの解析: 大学や研究機関では、腰痛や片頭痛などいろいろな症状のデータをAIで分析し、「どのツボを組み合わせるのが効果的か」を探っています。こうした研究が進めば、これまで経験的に行われてきた鍼灸治療が、より科学的な根拠を得られるようになるでしょう。「Artificial intelligence-directed acupuncture: a review(人工知能主導の鍼灸:レビュー)」『Chinese Medicine』誌 ※この論文はPubMed Central(PMC)に掲載されていますが、その内容はNLMやNIHの公式見解を示すものではありません。
- 個別化医療への応用: 東洋医学はもともと患者さん一人ひとりに合わせて治療方針を変える「個別化医療」の考え方を持っています。AIがさらに患者さんの生活習慣や遺伝情報なども組み合わせて分析できれば、本当の意味でのオーダーメイド治療ができるようになるかもしれません。
まとめ 〜「古い」は「新しい」に通じる?
東洋医学はとても古い知恵ですが、だからこそ長い歴史の中で培われた豊富なデータがあります。そしてそれを扱うAIとの相性は実はとても良いのです。さらに、東洋医学はそもそも全身を見る総合的な考え方なので、今注目されている「個別化医療」との相乗効果も期待できます。
もちろん、AIが何でも解決してくれるわけではありませんし、現代医学と東洋医学の良いところをどう組み合わせていくかは今後の研究課題です。でも、古い知恵と最新テクノロジーの融合が、新しい医療の可能性を切り拓いていくことは間違いありません。
もし東洋医学に興味があって、自分の体質や症状について詳しく知りたいという方は、ぜひ当院までご相談ください。
もし東洋医学に興味があって、自分の体質や症状について詳しく知りたいという方は、ぜひ当院までご相談ください。
参考文献
- Zhou M, et al. (2021). Application of Artificial Intelligence in Traditional Chinese Medicine.
- Annals of Translational Medicine (2020). TCM Meets Data Science.
- JMIR Medical Informatics (2019). Big Data in Traditional Chinese Medicine.
- Forbes JAPAN. (2022). 東洋医学とAIがつくる未来.
【QEEG】自閉スペクトラム症(ASD)と脳波(QEEG)の関係について
2025.02.25
近年、脳の電気的な活動を記録する**QEEG(定量的脳波)**を使って、自閉スペクトラム症(ASD)の特性を理解しようとする研究が進んでいます。ASDの診断や支援に役立つ可能性のあるQEEGの研究結果を、できるだけ分かりやすく解説します。
1. ASDの脳波には特徴的な違いがある?
QEEGを使うと、ASDの人と定型発達の人で脳波に違いがあることがわかってきました。特に、**脳の「つながり方」**に特徴的なパターンが見られます。
- ASDの人は近い距離の脳のつながり(ローカル接続)が強くなりやすい
- 逆に、遠くの脳の領域とのつながり(長距離接続)が弱めになることがある
これは、脳の情報処理の仕方に影響を与えている可能性があります。
2. 脳波の周波数に特徴がある?
QEEGでは、脳波の周波数(デルタ波、シータ波、アルファ波、ベータ波、ガンマ波など)を分析することで、ASDの人の脳活動の特徴を明らかにすることができます。
- デルタ波(低周波)やガンマ波(高周波)が強め
- アルファ波やベータ波のバランスが崩れがち
これが、感覚処理の違いや注意のコントロールに関係している可能性が指摘されています。
3. ASDの脳は「カオス」状態になりやすい?
「脳の信号の複雑さ(エントロピー)」を調べる研究では、ASDの人の脳波は不規則なパターンが多いことが報告されています。
- 「情報が多すぎてノイズが増える」ケース
- 「単純すぎて柔軟に情報処理できない」ケース
などがあり、脳の情報処理のバランスが崩れやすい可能性があります。
4. 脳波を整える治療法の可能性
QEEGの研究をもとに、**TMS(経頭蓋磁気刺激)やNFB(ニューロフィードバック)**といった治療法が注目されています。
- TMS:特定の脳の領域に磁気刺激を与えて、脳波のバランスを整える
- NFB:脳波のデータをリアルタイムでフィードバックしながら、望ましい脳波パターンを学習する
これらの方法が、注意力や社会的コミュニケーションの向上につながる可能性があるとする研究が増えています。
まとめ
- ASDの人の脳波には特徴的なパターンがある
- 脳のつながり方や周波数のバランスが異なり、情報処理の仕方に影響を与えている可能性がある
- TMSやNFBなどの脳波を調整する治療法が、新たな支援の可能性として研究されている
今後の研究が進めば、QEEGがASDの診断や個別のサポートに役立つ可能性があります。これからも最新の研究に注目していきたいですね。
参考文献
- Ribeiro, L. B., & da Silva Filho, M. (2023). Systematic Review on EEG Analysis to Diagnose and Treat Autism by Evaluating Functional Connectivity and Spectral Power. Neuropsychiatric Disease and Treatment. PMC9968781
- Milovanovic, M., & Grujicic, R. (2021). Electroencephalography in Assessment of Autism Spectrum Disorders: A Review. Frontiers in Psychiatry. DOI: 10.3389/fpsyt.2021.686021
- Gurau, O., Bosl, W. J., & Newton, C. R. (2017). How Useful Is Electroencephalography in the Diagnosis of Autism Spectrum Disorders and the Delineation of Subtypes: A Systematic Review. Frontiers in Psychiatry. DOI: 10.3389/fpsyt.2017.00121
- Wang, J., et al. (2020). Increased EEG coherence in long-distance and short-distance connectivity in children with autism spectrum disorders. Brain and Behavior. DOI: 10.1002/brb3.1796
- Angulo-Ruiz, B. Y., et al. (2023). Linear and Non-linear Analyses of EEG in a Group of ASD Children During Resting State Condition. Brain Topography. PMC10415465
急に寒くなってきたときのメンタルケア:寒波に負けない心と体の守り方
2025.02.03
2月5日、福岡市にも今季最強の寒波がやってくると言われています。寒さが厳しくなると、体だけでなく心にも影響が出ることがあります。冷えは自律神経のバランスを崩しやすく、気分の落ち込みや不安感を引き起こすことも。今回は、寒さによるメンタルへの影響を和らげるための簡単なライフハックをご紹介します。

1. 床の冷え対策で心もホッと
寒くなると床が冷たくなり、足元から体全体が冷えることがあります。特に床上30㎝の空気の対流が減少すると、足の冷えが強まり、血流の悪化を通じてメンタルにも悪影響を及ぼします。
対策:
- ラグやカーペットの活用:床に厚手のラグやカーペットを敷くことで冷気を遮断。
- スリッパや厚手の靴下:断熱効果のあるスリッパやウールの靴下で足元を保温。
- 床暖房代わりの工夫:ホットカーペットや電気毛布を足元に置くのも有効です。
2. エアコンが効かないときの工夫
エアコンだけでは部屋全体を暖めきれないことがあります。冷たい空気は窓や壁から侵入しやすいため、ちょっとした工夫で室内の暖かさを保つことができます。
対策:
- 窓際の段ボール:窓際に段ボールを立てかけることで、放射冷却を防ぎます。
- 断熱シートの活用:窓に貼る断熱シートやアルミホイルで冷気の侵入を防ぎましょう。
- カーテンの工夫:厚手の遮熱カーテンを使用すると効果的です。隙間を作らず、床まで届く長さのものがおすすめ。
3. 加湿で心と体を守る
乾燥は風邪のリスクを高めるだけでなく、肌荒れや喉の痛みを引き起こし、それがメンタルの不調にもつながります。
対策:
- 加湿器の使用:部屋の湿度を50〜60%に保つことで、快適さが増します。
- 濡れタオルを干す:加湿器がない場合は、濡れタオルを室内に干すだけでも効果があります。
- お湯を沸かす:やかんや鍋でお湯を沸かし、蒸気を利用するのも一つの方法です。
4. 冷えによるメンタルへの影響を防ぐ生活習慣
寒さは自律神経を乱し、気分の落ち込みや不安を引き起こすことがあります。以下の習慣を取り入れて、心のバランスを保ちましょう。
対策:
- 規則正しい生活:同じ時間に寝起きすることで、自律神経のリズムを整えます。
- 温かい飲み物を摂取:生姜湯やホットミルクなど、体を内側から温める飲み物を意識的に摂取。
- 軽い運動:ストレッチや軽い体操で血流を促進し、冷えを防ぎます。
- 入浴の工夫:ぬるめのお湯(38〜40℃)にゆっくり浸かることで、体の芯から温まりリラックス効果も期待できます。
5. 心のケアも忘れずに
寒さが続くと、気分が沈みがちになることもあります。そんなときは無理せず、自分を甘やかす時間を作ることも大切です。
対策:
- リラックス時間の確保:好きな音楽を聴いたり、温かい飲み物を片手に読書するなど、自分がリラックスできる時間を意識的に作りましょう。
- オンラインでの交流:外出が億劫なときは、友人や家族とオンラインで話すことで気持ちが軽くなります。
- 専門家の相談:気分の落ち込みが続く場合は、早めにメンタルクリニックに相談するのも一つの手です。
まとめ
急な寒波は体だけでなく、心にも影響を及ぼします。簡単なライフハックを取り入れて、冷えによるメンタルの不調を防ぎましょう。福岡市にお住まいの皆さんも、寒波に備えてしっかりと対策をして、この冬を元気に乗り切りましょう!
心も体も温かく保つことが、健やかな毎日への第一歩です。
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