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脳と腸の関係

2023.12.05

「腹黒い」「腹の虫が治まらない」「腑に落ちる」「断腸の思い」……。日本語には、内臓にまつわる慣用句が多くあります。怒りを「むかつく」と消化器症状で表現することもあります。

長い間、脳は高尚で気高い臓器とされる一方、腸は単なる末梢臓器の一つで、消化し排せつするための下等な器官と考えられてきました。しかし、脳と消化管・腸の間には密接なコミュニケーションがあり、それが過剰だったり不足したりすると、さまざまな疾病の原因になることが分かってきました。

緊張しすぎて、おなかがキリキリと痛む。便秘が続いて気分が晴れない。精神的なストレスが腸の不調を招いたり、その逆に、腸の不調が精神的なストレスに結びついたり。多くの人が経験する、こうした体験・症状は、脳と腸が相互依存関係にあることを示しています。これが「腸脳相関」です。

腸活で快活

では、どのようにして健康な「脳・腸・腸内細菌相関」を培っていくのか。

腸内細菌のバランスを保つために、なるべく旬の野菜やくだものなど原材料に近い食品、食物繊維が豊富で合成添加物が少ない食品や、発酵食品などを心掛けて摂取すること。食習慣を変えることで予防にもなり、体調や生活全般が改善されるケースもあります。朝食を取ることもとても大切です。

十分な睡眠や休養、適度な運動など、ライフスタイルのバランスにも気を付ける必要があります。何よりも、日々のストレスを自分一人で抱え込まないで、周りの人たちに相談しながら生活するのが最善です。 腸内細菌は、食事の栄養素を餌にして増殖し、それらを代謝してさまざまな物質を腸内で生成します。とりわけ、大切なものの一つに神経伝達物質セロトニンの生成があります。セロトニンの90%は腸内にあり、脳にあるのは2%。腸内でセロトニンの元となる必須アミノ酸(トリプトファン)が作られ、それが変換されて脳内セロトニンとなります。脳内セロトニンが不足すると、うつ病を進行させたり、長引かせたりする可能性があります。また、腸内に善玉菌を増やすと「幸せホルモン」とも呼ばれる脳内のオキシトシンの量が増えることも判ってきました。

腸内細菌のバランスを改善して整腸作用を示すことで、腸内菌叢の異常による下痢や軟便、便秘、腹部膨満感などの症状を改善します。当院でも適切な排便ができずお困りの方には整腸剤(薬名:ミヤBM等)の処方も行っております。詳細については診察の際にご相談下さい。

参考文献

  • 『内臓感覚-脳と腸の不思議な関係(NHKブックス)』福土 審著
  • 『腸と脳: 体内の会話はいかにあなたの気分や選択や健康を左右するか』エムラン・メイヤー著
  • 『あなたの体は9割が細菌―微生物の生態系が崩れ始めた』アレンナ・コリン著