【QEEG解説】ロレッタ解析
2024.12.10
QEEG(定量的脳波)のsLORETA(Standardized Low-Resolution Brain Electromagnetic Tomography)は、脳波データをもとに脳の内部の電気的活動を推定するための解析技術です。具体的には、頭皮上で記録されたEEG(脳波)の信号を、脳内の特定の部位で発生している神経活動にマッピングすることを目的としています。
sLORETAの特徴と仕組み
- 逆問題の解法
EEGは頭皮上の電極で記録されますが、この信号が脳内のどの部位から発生したものかを特定するには「逆問題」を解く必要があります。sLORETAはこの逆問題を解く一つの手法であり、脳内の電気的活動を三次元空間で推定します。 - 低解像度
名前に「Low-Resolution」とあるように、sLORETAは比較的低解像度の推定を行います。ただし、信号の空間的分布に対する誤差を最小化するよう設計されており、信頼性の高い結果が得られることが特徴です。 - 標準化
「Standardized」という名前が示す通り、信号強度を統計的に標準化することで、異なる被験者間や状態間での比較が可能です。 - 解析の出力
sLORETAは、脳の特定領域(たとえば前頭前野、帯状回、海馬など)での神経活動を、三次元的な地図として可視化します。この地図は、脳のどの部分が活性化しているかを示すヒートマップのような形で表示されます。 - 活用例
- 精神医学: うつ病、不安障害、ADHD、統合失調症などでの脳活動の異常を特定する。
- 神経科学研究: 認知機能、感情、注意など特定の脳機能に関連する領域を解析する。
- 神経フィードバック: 脳波データをもとに特定の領域のトレーニングを行う。
sLORETAの利点
- 頭皮でのEEG信号だけでは分からない、脳内の深部の活動を推定可能。
- 非侵襲的で簡便な手法。
- 標準化された方法論により、研究間の比較がしやすい。
注意点
- 解像度が低いため、脳内で非常に近接した領域を区別するのは難しい。
- 他の画像診断(MRIやfMRI)と組み合わせることで精度を向上させるのが一般的。