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うつ病治療に「伴走者(ピアサポート・家族・支援者)」は必要?研究が示す支えあいの力

2025.04.14

うつ病の回復には支えてくれる人の存在が欠かせません。ピアサポートの研究とTMS治療などの選択肢について解説します。
うつ病の治療というと、薬やカウンセリング、休養が注目されがちです。ですが、最近の研究では、「伴走者」の存在――つまり、患者さんのそばに寄り添って支えてくれる人の存在が、治療の成否に大きな影響を与えることがわかってきました。 では、その「伴走者」とは誰のことでしょうか?家族、友人、同じ経験をしたピア(仲間)、あるいは医療・福祉の支援者かもしれません。今回は、信頼できる研究結果をもとに、「人とのつながり」がどのようにうつ病の回復を支えるのかをご紹介します。

ピアサポートは薬やカウンセリングと同等の効果も

アメリカで行われた7つのランダム化比較試験(RCT)を統合したメタアナリシスでは、「同じような経験をした人(ピア)」による支援が、何もしない場合に比べて明確にうつ症状を軽減することが示されました(SMD=−0.59, p=0.002)。 さらに、グループで行う認知行動療法(CBT)と比べても、その効果に大きな差はなく、ピアサポートが専門的治療と同等の力を持ちうることが示唆されています。 参考:PMC3052992Efficacy of Peer Support Interventions for Depression: A Meta-Analysis Paul N Pfeiffer 1,2, Michele Heisler 1,3, John D Piette 1,3, Mary AM Rogers 3, Marcia Valenstein 1,2

家族が治療に関わることで回復が早まる

子どもや青年のうつ病治療において、親や保護者が積極的に関与すると、治療の効果が高まるというデータもあります。 17本の研究を統合したメタアナリシスによれば、家族の関与があることで、症状の改善効果は統計的にも有意でした(効果量d=0.34, p=0.01)。 参考:British Psychological Society Journal: Family involvement in psychotherapy for depression in children and adolescents: Systematic review and meta-analysis. Nele Dippel, Katharina Szota, Pim Cuijpers, Hanna Christiansen, Eva-Lotta Brakemeier | First published: 14 March 2022

社会的支援があるだけで、うつ病の「なりにくさ」も「治りやすさ」も変わる

うつ病の発症や再発には、社会的な孤立が深く関係していることもわかっています。社会的支援(友人関係、職場での支援、地域でのつながりなど)があると、うつ病の発症リスクが下がり、治療への反応も良くなる傾向があります。 逆に、孤立している人は治療の効果が出にくく、再発のリスクも高まるとされています。 参考:PMC4465276: The effects of psychotherapy for adult depression on social support: A meta-analysis Mijung Park 1, Pim Cuijpers 2, Annemieke van Straten 2, Charles F Reynolds III 1

伴走支援×TMS治療で、うつ病に向き合う新しい選択肢を

「支えてくれる人」と「適切な治療」がそろってこそ、うつ病の回復はより確かなものになります。 私たちのクリニックでは、医師による丁寧な診察に加えて、TMS治療(経頭蓋磁気刺激療法)という非薬物療法も導入しています。 TMS治療は、これまでのお薬が効きにくかった方や、副作用でつらい思いをされた方に向けた、からだへの負担が少ない治療法です。治療中も、スタッフや医師が伴走する形で、日々の変化を一緒に確認していきます。 「薬を増やすことに不安がある」「今の治療だけで本当に回復するのか不安」――そんな気持ちをお持ちの方は、一度こちらのページもご覧ください👇 👉 TMS治療について詳しくはこちら 👉 QEEG検査で分かるこころと脳の状態

まとめ:ひとりではなく、誰かと一緒に

うつ病は「こころの風邪」と言われる一方で、治療には時間も根気も必要です。その道のりを、たった一人で歩くのは簡単ではありません。 ですが、誰かがそばにいて、「一緒に歩いてくれる」という感覚があるだけで、人は回復に向かいやすくなります。 もし、あなたの大切な人がうつ病と向き合っていたら――どうか「支える」ことより、「一緒にいる」ことを大切にしてみてください。そして、あなた自身が苦しいときには、医療機関や周囲の人に「助けて」と声をかけてみてください。 ※本記事は最新の研究データを参考に、一般的な情報提供を目的として作成しています。具体的な医療内容については、必ず専門の医療機関にご相談ください。