ブログ記事一覧
精神科と糖尿病の意外な関係
2024.03.17
厚生労働省が定める医療計画において、五大疾病とは、がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病、精神疾患を指しています。現代の日本社会においていずれも重要な健康問題です。当院は精神科・心療内科ですので、精神疾患の患者様が多くご来院されますが、中には糖尿病を合併されている方もいます。
糖尿病の合併症にはなにがあるかご存知でしょうか?
3大合併症として、網膜症(網膜とは目の構造の一部です)、腎症、神経障害があります。その他にも脳卒中や虚血性心疾患など挙げればキリがないほどの合併症があります。その中でも心の病気と糖尿病の以外な関係があることをご紹介させていただきます。
たとえば、糖尿病患者はうつ病になりやすく、またうつ病患者も糖尿病になりやすいといわれています。
うつ病になると、血糖値のコントロールがむずかしくなり、糖尿病や脂質異常症の合併症が多くなりますので、うつ病を早期に発見し適切な治療を受けることが重要です。
糖尿病は国民の10人に1人といわれる国民的な病気です。早期は自覚症状がないため気づかなかったり、検査で血糖値が高く治療が必要といわれても治療を受けなかったりする人が多く、糖尿病で治療を受けている人は全体の半分弱にすぎないと推定されています。しかし糖尿病によって年間約1万5千人が死亡し、糖尿病による腎症で年間約1万5千人が人工透析を始め、年間約1,000人に糖尿病による高度の視力障害(失明など)が発生しています。このような合併症を起こさないようにするためには、血糖値に注意しながら生活習慣を改善する必要があります。
また、精神科で処方される一部の薬剤は、血糖値に影響を与えることが知られています。例えば、一部の抗精神病薬は体重増加やインスリン抵抗性を引き起こす可能性があり、これがリスクを高めることがあります。

糖尿病とうつ病との関係
これまでの調査によると糖尿病の約30%にうつ症状があるといわれ、糖尿病とこころの問題が重要視されるようになっています。糖尿病患者の13%は不安障害、11%はうつ病と診断され、5.7%は抗うつ薬を服用しているとの報告もあります。両者の関係について、神経系・内分泌系および免疫系の相互関係の研究がすすめられていますが、行動上の要因も大きいといわれています。
従来は、糖尿病と診断されることや糖尿病の治療(これまでの生活習慣を変えなければならなかったり、インスリン治療を始めなければならなかったりすることなど)、合併症の発症・進行などに伴うこころやからだの苦痛のために、糖尿病のある方はうつ病になりやすくなるのではないかと考えられてきました。最近では、糖尿病とうつ病の間にはよりさまざまな要因が関与する、複雑な関係があるのではないかと考えられるようになってきています。
糖尿病を自分で管理しなければならないことや、治療を続けなければならないこと、がんばっていたとしても合併症になるのかという不安が出てきたり、合併症を発症すると自由に行動できなくなったりと、すべてのことが心の負担となってきます (糖尿病に伴うストレスといいます) 。
一方で、うつ状態になると、過食になったり、嗜好が変わったり、毎日の行動が減少したり、内服薬・インスリンなどの注射を忘れやすくなった結果、HbA1c 値が悪化し、合併症を発症しやすくなることがあります。これらがまた気持ちをうつにしてしまいます。
糖尿病の合併症などのリスク上昇
糖尿病とうつ病を併発すると、生活の質が低下するばかりでなく、深刻な影響がでます。死亡率が1.6倍上がり、医療費は4.5倍に膨れ上がります。また糖尿病の合併症である神経障害・腎症や網膜症が起きやすくなり、またそれらの合併症が悪化する危険性が高まります。
うつ病になると、こころの面だけでなく、からだの面にも症状が出てきます。例えば、ホルモンや自律神経など、からだの働きを調節するさまざまな機能に不具合が生じます。このうち、糖尿病に関係する変化として、インスリンの作用が弱くなる(インスリン抵抗性)と考えられています。
そればかりではなく、うつ病になると意欲や集中力が低下し、予約どおりに通院したり、お薬を定められたとおりに服用するといった糖尿病の治療に必要な行動が行えなくなったり、健康的な食生活や身体活動量を保つことが困難になったり、喫煙量やアルコール量が増えるなど、糖尿病の悪化を招く悪循環に陥りやすくなります。
このような状態が長期間続くと、高血糖や低血糖のために緊急に医療機関を受診する機会が増えたり、糖尿病の合併症がすすみやすくなったりします。さらには健康なからだを維持していられる期間(健康寿命)が短くなったり、医療費の負担が増加したりするとも言われています。
糖尿病のある方ではからだの健康に加えてこころの健康にも気を配ることが大切なのです。

対処のポイント -うつ病を見逃さない
糖尿病とこころの問題が同時に起こったときは、まず両者が重なっていることを理解しなければなりませんが、糖尿病とうつ病を併発している患者の約半数は、「うつ病」になったことに気づいていないといわれています。うつ病は、こころの不調だけではなく、からだの不調として表れることもあります。からだの不調が糖尿病によるものなのか、うつ病のためなのか、判断が難しいこともうつ病に気づかない理由のひとつと考えられます。
糖尿病とこころの問題が同時に起こったときは、まず両者が重なっていることを理解しなければなりませんが、糖尿病とうつ病を併発している患者の約半数は、「うつ病」になったことに気づいていないといわれています。うつ病は、こころの不調だけではなく、からだの不調として表れることもあります。からだの不調が糖尿病によるものなのか、うつ病のためなのか、判断が難しいこともうつ病に気づかない理由のひとつと考えられます。
うつ病の症状(からだの不調)
- 体重が減った
- 食欲がない
- 眠りすぎる
- 動きや話し方が遅くなった
- 性欲が減った
うつ病の症状(こころの不調)
- 悲しい気持ちが消えない
- 以前は楽しめていた活動に興味を持てない、楽しめない
- 集中することや、物事を決めることが難しい
- 自分を大切に思えない
- 失敗したわけではないのに罪悪感がある
- 死にたいと思う
このように精神科と糖尿病は密接に関連していると言えます。定期的な健康診断と生活習慣の改善により、糖尿病およびその合併症の予防と管理に取り組むことが重要です。自分の健康に責任を持ち、積極的にケアを行うことで、糖尿病およびうつ病の影響を最小限に抑えることができます。
新生活とうつ
2024.03.09
新生活とうつ 本格的な寒さも終わり、木々が新芽を吹く季節を迎えました。

本来なら心が浮き立つ春が到来したというのに、メンタル不調を訴える人が多いのもこの時季の特徴です。
春先を“木の芽どき”と呼ぶ言い方は古くからあり、俳句の季語にもなっています。文字通り木の芽が出て虫たちが活動を始める時期なので、ポジティブに捉えられそうなものですが、そうではありません。
この言葉は、昔から「身体的精神的にバランスを崩しやすいので、病気に注意するべき時期」という意味でも、言い伝えられてきたのです。
医療現場でもこの時期は、うつ状態に陥る人が現れたり、認知症の行動・心理症状(徘徊、不穏、興奮など)が悪化したり、不定愁訴(ふていしゅうそ/器質的な原因が見つからないのにさまざまな不調を自覚して訴える状態)が多発する時期でもあります。
木の芽どきに起こる不調は、一過性のものだからと看過してはいけません。不調の原因を把握し、しっかり対策を立てることが必要です。
就職、入学あるいは会社で昇進した…など、環境が変わるとうつ病を引き起こしやすくなります。新しい環境に十分になじむまでのストレスを感じることが、うつ状態やうつ病のきっかけになることは少なくありません。
新生活が始まると、多くの人は気持ちを新たにし、自分自身に期待をかけます。それがうまくいかないと、『頑張りが足りないからだ。もっと頑張らなければ』と考え、さらに自分を追い詰めて不調になる人たちもいます。過度にがっかりせず、気持ちを楽にしましょう。
どのような対策をとればよいのでしょう?

この時期に心身の不調を感じたら、心の状態もよく見直してみましょう。
ストレスの多い現代社会で心の健康を保つためには、よい意味での『適当さ』や『遊び』が必要です。食事、睡眠、休養、運動などの生活習慣を整えることも、心の健康を維持する基盤となります。
いつもと違う不調があり、長引くようなら、心療内科や、精神科を受診しましょう。小さなストレスが積み重なり、うつ症状やうつ病のきっかけになることは珍しくありません。
不眠や胃痛、下痢等の消化器症状が出現すれば内科を受診し、胃薬や睡眠導入剤などを処方される。あるいは、春は花粉症とも重なるので、全身の不快症状をアレルギーと誤解して抗ヒスタミン薬を処方されることもあるかもしれません。これによりまた、うつ状態をこじらせたり、早期発見を遅らせたりすることもあります。
身体が不調なときには心も大丈夫?と自分で問いかける習慣が重要です。家族同僚、後輩などもそういう視点で見守ってあげたいところです。
もちろん新しい環境におかれ多少のストレスを自覚することは、人間の防御機能として当たり前の作用で、それがすべてうつ病につながるというわけではありません。
グレーゾーンの「うつ状態」が「うつ病」へと進行しないためには、十分な休養と早期受診が有効です。
うつ状態が長く続くと、睡眠障害や食欲不振といった身体的症状がではじめます。眠れない、眠っても目覚めてしまう、食欲がない、胃痛や下痢などの消化器症状が続く、倦怠感などから仕事を欠勤、学校を欠席するようになると、うつ病を心配しなければなりません。精神科や心療内科を早めに受診するほうが、うつ症状を長引かせるよりは早めの改善が期待できます。ですが、精神科を受診することに抵抗感がある方も少なくないと思います。
睡眠障害がではじめて2週間以上、欠勤ないし欠席が続くようになったタイミングで、精神科や心療内科の受診をおすすめします。
以前は抗うつ薬の中には強い副作用(吐き気、下痢、不眠、性機能障害など)がありましたが、近年の治療薬の進歩によりほとんど副作用のないものも出てきました。ただし効果が出るまでには2~3週間程度かかることがネックになります。
当院では、内服をしないうつ病治療rTMS(反復的経頭蓋磁器刺激法)を取り入れています。頭に直接、強力な磁気をあて、刺激を与えること脳の機能低下を改善することを目的とした治療法です。
脳に直接刺激を与えるという治療に不安がある場合、治療そのものをいったん終了することができます。その点も体内に残る抗うつ剤治療とは違う点です。
うつ病患者の脳を画像診断すると、脳への血流量が著しく低下しているのがわかります。特に、人間の感情や人格を支配する前頭葉への血流量の低下と機能低下といった、共通所見がみられます。
rTMS治療は前頭葉の一部分に磁気をあてて刺激を与えることで、前頭葉の活動を活性化させる一方、前頭葉の機能低下を補うためにオーバーヒートしている脳の扁桃体という部位の過活動を抑え、脳機能のバランスを取り戻しうつ病を改善させていきます。
rTMS治療はうつ病治療の有効な選択肢の一つであり、利点としては薬物に頼らなくて済むこと、副作用がないことです。最近の抗うつ剤は、以前よりも副作用は少なくなったものの、それでも一定の副作用は生じるので、長期間にわたり内服しづらいという欠点もあります。内服治療を続けても、うつ病の10~20%は慢性化してしまうという投薬治療の限界もあります。
rTMS治療の利点は体の負担は少なく、即効性があるということです。うつ病治療は本来であれば中途半端にすることなく、学校や勤務先を休んで、しっかりと治療に専念することが望ましいのですが、外来でrTMS治療を受け日常生活を維持しながら加療できる場合もありますので、お気軽にご相談ください。
最後に

こころの病気は、本人が苦しんでいても、周囲からはわかりにくいという特徴があります。私たちは、病気や怪我をした人には「無理はしないでね」と、自然に声をかけることができます。しかし、こころの病気の場合は、外から見ても気がつかないことがあり、知らないうちに無理なことをさせたり、傷つけていたり、病状を悪化させているかもしれません。
私たちみんながこころの病気を正しく理解することはとても大切です。
あなたは一人ではありません。
どんな些細なことでも当院までご相談ください。
うつ病と風邪は関係ありますか?
2024.02.25

季節の変わり目などの寒暖差が大きい時期は、風邪を引くことが多くなりがちです。当院で受診されている患者様から「うつ病と風邪は関係ありますか?」という質問をいただきましたので、ご紹介させていただきます。
うつ病になると、身体的な不調があらわれます。倦怠感や食欲不振、頭痛などのほかに心因性の「発熱」が見られることもあります。では熱っぽい、微熱があるなどといった症状はどうしてなるのでしょうか。
発熱の原因/自律神経の乱れ
自律神経が乱れると症状の一つとして発熱が見られます。自律神経は自分の意思とは関係なく、自動的に食べ物を消化吸収する。心臓を鼓動させる。体温を自動的に調整し、発汗することで平熱を維持する。などの働きがあります。
しかし過度なストレスや疲労、人間関係などが原因で自律神経が乱れることがあります。すると次第に体温調節が上手く機能しなくなります。そのため不安やイライラなどから体温が上昇します。したがって、心身の影響によって熱っぽい症状となるのです。
発熱の原因/風邪
うつ病を患っているときは、精神的に気分が落ち込みやすくなります。気分の落ち込みに伴って体の免疫力も下がります。抵抗力が落ちた体内にはすぐに細菌やウイルスが入り込みます。そのため風邪を引きやすくなるのです。
発熱の原因/うつ熱
これまでの発熱の原因以外に「うつ熱」という外的因子が要因になることもあります。「うつ熱」と呼ばれていますが、病気が原因ではありません。原因は周辺環境の異常な暑さです。普段私たちを取り巻く気温は、体温よりも低いことが通常です。そのため私たちは体内の熱を放出し、平熱を保っています。しかし38℃を超えるような真夏の気温であれば、熱が放散できず体内にこもってしまいます。また、激しい運動で一気に体温が上昇し、熱を放散しきれなくなったときも同じです。このような熱が発散できない状態を「うつ熱」または「熱射病」ともいいます。

発熱がある場合の病院を受診するタイミング
現在発熱を伴う場合、病院ではインフルエンザやコロナウイルスの検査を実施されます。しかし、検査のタイミングで2度受診して検査を受けなくてはならなくなったという例もあります。
インフルエンザやコロナウイルスでクリニックや病院を受診するタイミングは、発熱などの症状が現れてから12~24時間経過した頃が適切だといわれています。
インフルエンザにはA型とB型がありますが、いずれにおいても感染してすぐの頃は体内にいるウイルス数が少ないため、検査でウイルスを検出できない場合があるためです。時間が経つにつれてウイルスの数が増えていき、発症してから約12時間経過した頃に検査を行うとウイルスを検出できる確率が十分に高まるので、発熱などの症状が現れて12時間以上経過してから病院を受診することが推奨されています。しかし、インフルエンザの治療薬の効果が十分に期待できるのは発症から48時間以内です。また、コロナウイルスは発症してから少なくとも8~12時間、できれば1日程度待ってから検査をすることが推奨されています。病院への受診が遅れると、検査をする意味も治療薬の効果も薄れてしまうので、遅くなりすぎないようにすることも大切です。
自律神経失調症
2024.02.11
~季節の変わり目と自律神経の乱れ~
季節の変わり目に、なんとなく身体がだるい、眠れない、イライラするといった身体の不調。皆さんも一度は経験があるのではないでしょうか? 特に季節の変わり目や昨今の自粛期間中にそんな症状を感じたとすれば、それは自律神経が乱れているサインかもしれません。
自律神経の乱れとは?
自律神経とは、身体の働きを調整する神経のことで、交感神経と副交感神経の二つから成り立っています。主に交感神経は身体の働きを促し、副交感神経は逆に休ませるといった役割を持ち、状況に応じてそれぞれが働くことで、自律神経は私たちの身体を常にベストな状態にしようとしています。例えば暑い時に汗をかいて体温を下げる、食事をした時に食べ物を消化するといったことも、この自律神経の働きの一つです。
しかし、この自律神経のバランスが整わなくなると、これらのコントロールがうまくいかなくなり、身体に様々な不調を感じてくるのです。
自律神経の乱れで起こる不調とは?
季節の変わり目に自律神経が乱れると、次のような症状がよく現れるようになります。もちろん、そのほかにも不調は起こりますので、ここでご紹介する以外の症状もあります。
- 気分の落ち込みや不安な気持ちが続く
- イライラしてしまう
- 朝起きると体がだるい、重たい
- 眠れない
- めまいや耳鳴り
- 頭痛や肩こりが続く
- 肌トラブルが多くなる
- 腹痛
- 汗をかきやすくなる
このように自律神経が乱れると、様々な不調が起こり、日常生活にまで支障をきたすようになります。
季節の変わり目に自律神経の乱れが起こる原因とは?
季節の変わり目で気温の変化が大きいと自律神経が混乱してしまって症状にあらわれてきます。
昼間はあたたかいのに朝夕がめっきり冷え込むようになったという「朝晩と昼間との気温差」など環境の変化に対応しようして自律神経が過剰にはたらいてしまうのが、症状がひどくなる原因のひとつです。
また、季節の変わり目は、日照時間も少しずつ変化するので、人間の睡眠サイクルにも影響し、自律神経の働きとの間にズレが生じてコントロールしづらくなります。
体温調節機能を整える
現代では家庭も、オフィスも、電車も、お店も、どこにいてもエアコンのきいた快適な環境なっています。体が持っている「体温調節機能」はサボリがちになります。運動しないと筋肉が衰えるように自分で体温調節しないとその機能も衰えてします。
まずは、下記の事をから実践してみてはいかがでしょうか。
・規則正しい食生活。バランスの取れた食事を心掛けましょう。
・朝、太陽の光を浴びる。太陽の光を浴びることで自律神経のモードが切り替えられて1日の神経のバランスを整えることができます。
・浴槽浴をする。お風呂につかる事で、汗をかくことで体温調節機能を鍛える事ができます。
・運動をして、基礎代謝アップを図る。運動することは体温調節機能をつかさどる自律神経をきたえることにもなるので、とてもおすすめです。
その他、季節の変わり目には、自律神経の乱れの他に花粉症や鼻炎、アトピーなどの症状を起こすことがあります。これらは、免疫バランスの乱れによって生じる恐れがある症状です。
季節の変わり目に体調が崩れやすくなるのは、このように寒暖差によって体を調整しようとストレスが溜まり、免疫力が低下するためなのです。
気圧の差が大きく「内耳(ないじ)」が過剰に反応することです。この内耳は気圧の変化を感知する働きがあるのですが、気圧の変化が大きいと感知する働きが過剰になります。気圧の変化による過剰反応の情報が脳に伝わると、交感神経が優位になって自律神経のバランスが崩れます。このため、体調が崩れやすくなるのです。
季節の変わり目の体調不良を和らげる対処法
ツボ押しをする
ツボ押しをすると症状が和らぐのは、反応点であるツボを刺激することによって、全身の気血の流れを調節して自律神経も整えることができるからです。
季節の変わり目に起こる体調不良の原因は自律神経の乱れのため、ツボ押しで自律神経が整って症状を和らげられます。
- 百会(頭のてっぺん)
- 三陰交(内くるぶしから膝に向かって指四本分上がったところ)
- 合谷(親指と人差し指の交わるところから、少し人差し指よりにあるへこんだところ)
上記のツボ辺りを押してみて心地良く感じるところ、強さを探し、無理に押しすぎたりしないようにしましょう。
耳マッサージをする
耳には自律神経と関わりがあり、全身の臓器や血流とも関わっています。聴覚として酷使したり、疲れたりすると全身に影響してきます。
健康的な耳を目指して優しく、いたわるようにマッサージしましょう。
①耳の裏側に親指を置き、人差し指で耳を挟んで満遍なく耳全体を揉みほぐしていきます。
②中指人差し指で耳を挟み、ゆっくりと丁寧にこすっていきます。
③耳の上部、真ん中、下部を上、外側、下と順番に引っ張っていきます。
受験とうつ ~受験生も保護者も大変~
2024.02.04
本日2024年2月4日は第118回医師国家試験の2日目だそうです。昔は3日間にかけて行われていた医師国家試験も試験の日程が2日に短縮され、この二日間が勝負という受験生も少なくありません。
中学受験、高校受験、大学受験、国家試験とこの1月から3月にかけては様々な試験のラッシュですので、家族に受験生がいるご家庭だとこの季節は一大事になります。
受験はプレッシャーとの闘い
受験というのはプレッシャーとの闘いでもあります。
例えば、試験会場での極度の緊張から腹痛・下痢・嘔吐などをきたしてしまい、トイレにこもりきりになってしまうことで本来の実力を発揮できないまま試験を受けてしまう人(過敏性腸症候群)や、名前の書き間違えや細かな確認行為がやめられず時間を余計に消費してしまう人(強迫性障害による)はメンタルクリニックでの治療を受けてから試験に臨まれるのが良いかもしれません。
2日間にわたって行われる医師国家試験では、1日目の試験がふるわず、2日目は受験会場に来なくなってしまう受験生が毎年一定数います。
子供を合格に導くのは、父親の経済力と母親の狂気
ドラマ化もされた『二月の勝者』という漫画からの引用です。
受験勉強や予備校への通学は金銭的にも労力的にも家庭に負担がかかり、家庭の中で摩擦が起きることは少なくありません。
お父様が「○○には中学受験の代金として200万円も使っているんだぞ!なんでこんなに出来が悪いんだ!」と金銭的な負担を課せたり、お母様がヒステリックになったりしてしまうことも少なくありません。
受験というストレッサーは家族関係に大きな影響を与えてしまいます。
心身に不調を感じたら早めにメンタルクリニック受診を
・気分が落ち込む
・やる気が起きない
・体が重く、疲れやすい
・頭がすっきりせず、集中力・判断力が低下している
・眠れない、または早く目が覚めるや夜中に目が覚める
・食欲がない
これらの様な症状にいくつか該当する。また最近、自分自身で気づいた変調や、仕事の効率が落ちている等、何らかの違和感を感じているのであればメンタルクリニックの受診をおすすめいたします。
受験うつとrTMS治療
当院にrTMS治療を目的にご来院される患者様には、働きながら治りの悪いうつや強迫性障害、コロナ感染後のブレインフォグ等を外来で治療したいという方が多くご来院されます。
また、東京には受験うつをrTMSで治療するクリニックがあるそうですが、当院としてはこの治療方針には賛成です。rTMSによる治療は抗うつ薬などの薬剤治療と比較して、眠くなりにくく、パフォーマンスを出しやすくなる側面があるからです。福岡県内に自由診療でrTMS治療を扱っている病院・クリニックは多くありません。当院は、福岡市内で交通の便も利用しやすく、お仕事がお休みの土日、祝日を利用して治療される患者様が多く来院されています。
気になる方は、まずは受診されて医師に相談し説明を受けてみてはいかがでしょうか。
鉄不足でうつや不安に⁉
2024.02.02
鉄欠乏症は、うつ病に類似した症状が出現することが古くから指摘されています。鉄欠乏は、ドーパミンなどの神経伝達物質の機能の障害を起こすことが報告されています。鉄欠乏はドーパミン機能を低下させることが示唆されるため、うつ病患者を含む精神疾患患者に対しては、血清鉄やフェリチン値による潜在的鉄欠乏をチェックし、食事療法や鉄剤による補充を行うべきであるとされています。
当院では薬物療法を軸に、うつの治療を行います。薬物療法といっても、できる限り少量のお薬でつらい症状をやわらげ、生活の質を向上させることを目標としています。
薬物療法を行う場合、血液検査で肝臓や甲状腺の機能を確認しながら経過をみていきます。その他にも、心とからだを健康に保つ役割のある鉄分や亜鉛の量もはかります。
また、鉄分や亜鉛の摂取量を食事などで増やすことで、うつ症状をやわらげてもいきます。

鉄分の効果
鉄分は正常な体の機能を保つのに欠かせないミネラル分です。赤血球が酸素を運ぶのに必要なヘモグロビンを形成するのに鉄が必要となります。
鉄分が不足すると赤血球が縮小し、うまく酸素を体にまわすことができなくなってしまいます。この状態を鉄欠乏性貧血といいます。主な症状としては疲れやすい、めまい、立ちくらみや蒼白い顔色、などです。
ではなぜ鉄分不足がうつの症状に繋がってしまうのでしょうか。実は、快感情や意欲に関係する脳の伝達物質であるドーパミンの生成には鉄分が必要です。
ドーパミンが不足すると慢性的な疲れ、意欲がわかない、不安や憂鬱感、集中力の低下などがみられます。
ドーパミンはタンパク質を多く含む食材から得られるチロシンというアミノ酸によって作られます。しかし、チロシンからのドーパミン生成を正常に脳細胞がドーパミンに反応するためには鉄分が必要です 。
当院で行う血液検査は、鉄分の貯蔵量を示すフェリチンの量をはかって貧血状態を把握します。フェリチンとは、体の内部に鉄を蓄えるタンパク質で、幹細胞などを中心に分布している。血液中の鉄分が不足すると、フェリチンに蓄えていた鉄分が放出されて、血液中の鉄分量を調節する。ふだん使う財布のお金を「ヘモグロビン」、貯金分を「フェリチン」とお金にたとえて考えるとわかりやすいでしょう。
「ヘモグロビン値が正常でも、このフェリチン値が低下していれば、鉄の貯金が減っていることになり、気分が落ち込む、イライラする、動機やめまいがする、目覚めが悪い、冷え性である、といった症状が出ます。
鉄不足の鉄欠乏性貧血の最近は男性も多いと言われています。ヘモグロビン値が低くなる貧血を『鉄分欠乏性貧血』というのに対して、フェリチン値が低くなることを『潜在性鉄欠乏症』といいます。健康診断の数値を見ただけでは鉄不足を見逃してしまうことも多く、この“貧血ではないのに鉄不足”の人がうつやパニック障害の人にとても多いのです。

鉄分不足は産後うつの原因にも
出産によって貯蔵鉄は空っぽになってしまいます。
フェリチン値5以下の人が20代の女性よりも30代・40代に多いのは、その年代に出産する人の割合が多いことをあらわしています。
妊娠と出産では鉄分が赤ちゃんへと移行し、お母さんの鉄分不足が深刻になります。これは「産後うつ」の発症と大きく関係していると言われています。
ですから、妊娠や出産によって大量の鉄分が必要な女性は、積極的に補給する必要があります。

亜鉛の効果
体内の神経伝達物質の中でも一番多いのがグルタミン酸です。グルタミン酸には神経を興奮させる効果があり、脳の活性化や、神経の成長および神経のコミュニケーションを促すのに必要な物質です。認知力や気分のコントロールと深く関係しています。そのグルタミン酸の働きのバランスを保つのを支えるのが亜鉛です。
うつ病と診断された人は、そうでない人と比べ血中の平均亜鉛量が14%下回っていること、さらにはうつが重症になるにしたがって亜鉛量が減少していくことが報告されています。
体内の亜鉛量とうつの症状が関係していることが推測できます。
最後に
お薬を使ってうつ病を治療する場合、医師の支えは必要不可欠です。
副作用なども報告されていますので、治療の経過やお身体の調子などを、血液検査を用いながら、しっかりと治療していくのが最善策となります。
お薬以外の方法でも、当院ではTMS治療などを行っていますのでご相談ください。
【入浴と睡眠】
2024.01.07
入浴と睡眠
「仕事で疲れているのに眠れない」「運動して体は疲れている筈なのに眠るまでに時間がかかる」そんな時は浴槽入浴をしてみるのも一つの解決手段になります。
入浴には、疲労回復や快眠、リラックスといったさまざまな効果がありますが、お湯の温度や入浴時間によっては身体に負担がかかってしまうので注意が必要です。入浴後に疲れを感じる方は、お湯の温度や入浴時間が適切でないことが考えられます。そこで今回は、理想の入浴時間や入浴の効果を高める方法、入浴時の注意点を紹介します。入浴時間を見直す際は、本記事の内容をぜひ参考にしてみてください。

素早く疲労回復する入浴法
スポーツの後は、血液中に乳酸などの疲労に関係する物質が増えた状態になります。疲労回復のためには、早めにそれを流し去って(フラッシング)、適切な場所で分解したりエネルギーに変えたりする必要があります。また、疲れた場所に食事で取った栄養を運ぶためにも血流アップは大切。お風呂の力を積極的に活用しましょう。
1.体が落ち着いたら早めに入浴
運動直後のまだ息があがっているような状態は、水圧などが体の負担になるのでNG。ストレッチなどで体を十分にクールダウン。それから入浴するよう心がけましょう。
体や息がある程度落ち着いたら、体が冷える前、なるべく早めに入浴を。
2.「ぬるめ&長め」が基本
血流アップのためには、長めにじっくり20分以上入ることが何より重要。
そのためには温度もぬるめの39℃程度で。運動後は体が温まっているので、半身浴でもOKです。
3.脚マッサージで疲れケア
スポーツの後に疲れを感じやすいのは脚。
疲労回復やむくみの対策として、ふくらはぎを下から上に向かってマッサージ。脚先に溜まった血をしっかり流します。
肩こりをやわらげる入浴法
辛い肩こりに悩まされている人は多いですが、お風呂できちんとケアしている人は意外と少ないのでは?コリの解消には「温めて血行を良くすること」「筋肉をやわらげほぐすこと」が大切。
この2つが一度にできるお風呂は肩こり解消に最適の場所なのです。温め&ストレッチを毎日実行することから始めましょう。
1.しっかり全身浴が基本
まずはほぐすためのベース作り。体をしっかり温め血行を良くするために、40℃のお湯に10~15分入浴します。この時、しっかり肩までお湯につかるのがポイントです。
2.肩を動かしてほぐす
次に肩をストレッチ。
①肩に力を入れてぐっと引き上げる。
②一気に力を抜く。この動作をゆっくりと10回程度繰り替えしましょう。肩を回す動きなどをプラスするとさらにGOOD。
3.首回りを伸ばそう
お湯につかった状態で、無理をせず、気持ちいいと感じるくらいで行いましょう。
冷えを解消する入浴法
冷えは、血流が悪いために生じます。その原因はストレスや不規則な生活などによる自律神経の乱れや筋肉量の不足などがありますが、まずはお風呂に入って血流を高めましょう。お風呂の浮力によるリラックス効果と体温上昇による血行促進効果は、どちらの冷えにも有効。まずは毎日入浴しましょう!
1.浮力と温熱を感じよう
リラックスには浮力、血行促進には温熱を感じることが効果的。家庭のお風呂では限界はありますが、できるだけたっぷりのお湯を使って、ゆったり気分を味わうのもオススメです。
2.全身浴は「ぬるめ&長め」で
気温の低い秋冬は40℃くらいのぬるめのお湯で10~15分、しっかり全身浴をして血行促進しましょう。意外と時間が長いので、時計でしっかりチェックして。
3.半身浴でもOK
長時間つかるのが苦手な人には半身浴がオススメ。
5分全身浴した後に、体を起こすかお湯を減らすかして半身浴を15分。
半身浴の際のお湯の位置は、みぞおちあたりを目安に。お風呂の蓋を利用すると蒸した状態(サウナ)になりより効果的です。

入浴する際の注意点
・いきなり浴槽に入らない
いきなり浴槽へ浸かると急激な血圧上昇から頭痛やめまい、吐き気などの症状を引き起こす可能性があります。身体への負担を軽減するためにも、かけ湯やシャワーで徐々にお湯に慣れてから浴槽に入りましょう
・ヒートショックに気をつける
ヒートショックとは、寒暖差による急激な温度変化で血圧に大きな変化が起きる現象のことです。家の中でも、リビングと脱衣所、浴室には温度差があるため、ヒートショックが起きる可能性があります。
特に冬の間は、寒い脱衣所から急に熱めのお湯に入ると身体に大きな負担をかけてしまいます。事前に脱衣所を暖めておくなど、浴室との温度差をやわらげる予防策を講じましょう。
・食後すぐに入浴しない
食事直後の入浴は胃腸の働きが悪くなる恐れがあります。また、食後は眠たくなるため、お風呂で寝てしまい入浴時の事故につながる可能性も考えられます。安全に入浴するためにも、食後1時間程度あけてから入浴しましょう。
・水分補給を忘れない
高めの温度や長風呂は脱水症状の恐れがあります。特に、熱めのお湯に入りたいときや長風呂をしたいときは、水分補給を忘れないようにしましょう。
・長風呂しすぎない
長風呂は脱水症状を引き起こす原因となり、肌の乾燥や身体の負担となることがあります。入浴時間を長くしたい場合は湯温をぬるめに設定し、水分補給や休憩を意識的に取り入れましょう。
状況に応じて適切な入浴時間を覚えておけば、疲労回復や睡眠の質を高める効果が期待できます。ぜひ今回ご紹介した内容を、毎日の入浴で心掛けてみてください。また、入浴後、出来る限りリラックスできる環境で過ごすことが大切です。スマホなどのブルーライトを長時間見ていると、交感神経が優位となり覚醒状態になってしまいます。就寝前の自律神経の乱れは、睡眠にも影響を及ぼし翌朝の目覚めにも悪影響を及ぼします。入浴後は部屋の温度や湿度の環境を整え、強い光や大きな音を避ける等、快適に過ごすことを心掛けましょう。
入浴後の睡眠
正しい入浴をすると、深部体温が上昇し、血行が良くなります。お風呂から出ると、深部体温はだんだん元の体温に下がっていきます。人間は深部体温が下がると眠気を感じる性質があるため、寝る前の適切な時間に入浴をして深部体温を上げることで、最初の90分間の眠りを深くしてくれると言われています。
入浴後2~3時間後に寝るのが理想的で、深い睡眠を得るベストな時間帯です。
また、睡眠に関する悩みを抱えている場合、不適切な習慣や対応によって、かえって悪循環に陥っているケースが見受けられます。これを改善し質の良い睡眠をもたらすためには、日中の活動にも目を向けることが大切です。
・眠くなってから寝床につき、すみやかに寝付くことを心がける
・就寝前や寝床では音・光(照明、パソコン、スマホなど)はなるべく控える
・寝酒は、睡眠の質を悪くするため、やめるよう指導する
・就寝前4時間のカフェイン摂取、就床前1時間の喫煙をさける
・寝る直前に激しい運動など体温が上がる行動はしない
・中途覚醒時に余計に頭が冴えるのを防ぐために、アラームをセットしたら夜中には時計を見ない
・朝は一定の時刻に起きて、光を浴びる
・昼間は長く臥床しない
意外にも、睡眠の質と深い関係にあったお風呂。寝る前の入浴方法を見直し、ぜひ良質な睡眠を手に入れてください。

参考文献
- バスクリン公式サイト
- 林田健一:どう診る?日常診療に潜む睡眠障害、jmed12号いきなり名医!日本医事新報社
- 林田健一:朝、スッキリ目覚め「いい眠りだったな」とつい言ってしまう本、主婦の友社
- 内山真(編):睡眠障害の対応と治療ガイドライン第2版、じほう
ブレインフォグに効果が期待されるTMS
2023.12.06
TBSでブレインフォグについて報道されています。よろしければ下記リンクをご参照下さい。
“最後の課題”新型コロナ後遺症治療の最前線 電磁波で脳を活性化 「ブレインフォグはなぜ起こるのか?」原因に迫る臨床研究の現場に密着【news23】|TBS NEWS DIG
ブレインフォグ(コロナ後遺症)とは
コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染した後、様々な後遺症が見られます。これを一般的にコロナ後遺症(Long-COVID)と呼びます。
咳や筋肉痛、息切れや倦怠感などが続くことが多く、中でも特殊なのが、ずっと頭にもやがかかったような状態になるブレインフォグ症状です。
厚生労働省:新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる後遺症)について
ほとんどの人では炎症は脳に達しないものの、新型コロナウイルスの特殊な特性として、全身に炎症反応を引き起こす性質があると知られています。(重症な例だと、サイトカインストームなどと呼ばれることもあります)
炎症が脳に波及することにより、このように脳に霧やもやがかかったようになり、うつ病のような状態になることから当院のような精神科・心療内科へのご相談もしばしばあります。
似たような現象は一般的なウイルス感染でもまれに見られ、線維筋痛症や、いわゆる診断のつかない不定愁訴との関連がこれまでも示唆されてきました。
ブレインフォグに対してrTMS治療は有効なのか
TMS治療は、磁気を介して脳の特定部分をピンポイントで刺激する治療法です。お薬に頼らない新しい治療法として2019年6月に日本でも認可され、近年日本内でも注目が高まっています。コロナ後遺症に伴うブレインフォグの治療法として、TMS治療の効果が期待されます。
TMS治療で回復する可能性があると間違いなくいえるのは、「うつ病症状が疑われる方に対して」になります。まずは臨床経験の豊富な専門家に相談し、ご自身で感じているブレインフォグの症状がどのようなものかを探りましょう。
うつ病の症状と関連があれば、TMS治療にて改善を目指すことは有効な治療選択肢になります。
当院で使用しているマグプロr30(Magpro)は最前線の研究・治療現場でも使用されている最新機種
国内外にTMSメーカーはいくつかありますが、当院で採用しているマグプロは大学病院研究グループもうつ病やブレインフォグの研究・治療に活用しており、安全面においても実績のある機種になります。
主な副作用も施術時の軽度の頭痛程度になりますので、少ない副作用で安心して治療を受けていただくことが可能です。
脳と腸の関係
2023.12.05
「腹黒い」「腹の虫が治まらない」「腑に落ちる」「断腸の思い」……。日本語には、内臓にまつわる慣用句が多くあります。怒りを「むかつく」と消化器症状で表現することもあります。
長い間、脳は高尚で気高い臓器とされる一方、腸は単なる末梢臓器の一つで、消化し排せつするための下等な器官と考えられてきました。しかし、脳と消化管・腸の間には密接なコミュニケーションがあり、それが過剰だったり不足したりすると、さまざまな疾病の原因になることが分かってきました。
緊張しすぎて、おなかがキリキリと痛む。便秘が続いて気分が晴れない。精神的なストレスが腸の不調を招いたり、その逆に、腸の不調が精神的なストレスに結びついたり。多くの人が経験する、こうした体験・症状は、脳と腸が相互依存関係にあることを示しています。これが「腸脳相関」です。
腸活で快活
では、どのようにして健康な「脳・腸・腸内細菌相関」を培っていくのか。
腸内細菌のバランスを保つために、なるべく旬の野菜やくだものなど原材料に近い食品、食物繊維が豊富で合成添加物が少ない食品や、発酵食品などを心掛けて摂取すること。食習慣を変えることで予防にもなり、体調や生活全般が改善されるケースもあります。朝食を取ることもとても大切です。
十分な睡眠や休養、適度な運動など、ライフスタイルのバランスにも気を付ける必要があります。何よりも、日々のストレスを自分一人で抱え込まないで、周りの人たちに相談しながら生活するのが最善です。 腸内細菌は、食事の栄養素を餌にして増殖し、それらを代謝してさまざまな物質を腸内で生成します。とりわけ、大切なものの一つに神経伝達物質セロトニンの生成があります。セロトニンの90%は腸内にあり、脳にあるのは2%。腸内でセロトニンの元となる必須アミノ酸(トリプトファン)が作られ、それが変換されて脳内セロトニンとなります。脳内セロトニンが不足すると、うつ病を進行させたり、長引かせたりする可能性があります。また、腸内に善玉菌を増やすと「幸せホルモン」とも呼ばれる脳内のオキシトシンの量が増えることも判ってきました。
腸内細菌のバランスを改善して整腸作用を示すことで、腸内菌叢の異常による下痢や軟便、便秘、腹部膨満感などの症状を改善します。当院でも適切な排便ができずお困りの方には整腸剤(薬名:ミヤBM等)の処方も行っております。詳細については診察の際にご相談下さい。
参考文献
- 『内臓感覚-脳と腸の不思議な関係(NHKブックス)』福土 審著
- 『腸と脳: 体内の会話はいかにあなたの気分や選択や健康を左右するか』エムラン・メイヤー著
- 『あなたの体は9割が細菌―微生物の生態系が崩れ始めた』アレンナ・コリン著
飲酒と睡眠
2023.11.11
アルコールは少量なら気持ちをリラックスさせたり会話を増やしたりする効果がありますが、大量になると麻酔薬のような効果をもたらし、運動機能を麻痺させたり意識障害の原因になります。中でも睡眠には影響を及ぼします。
アルコールは寝つくまでの時間を短縮させます。そのためアルコールを寝酒として使う人もいます。しかし就床1時間前に飲んだアルコールは、少量でも睡眠の後半部分を障害することがしられています。つまり、寝つきは良いのですが夜中に目覚めてその後なかなか眠れないという現象がおこります。また就床前のみならず就床6時間前に飲んだアルコールも睡眠後半部分の覚醒度を上げることが知られています。
このような事から飲酒にはさまざまなメリットがありますが、飲み過ぎるとメリットを上回るデメリットが心身に現れます。アルコールのメリットを得るには、適量を守って飲むことが大切です。適量を把握し、飲み過ぎている場合は自分に合った工夫を見つけて、お酒と上手に付き合っていきましょう。
