カフェインを使うADHDの戦略
2025.11.22
ADHDと聞くと、「多動」「不注意」「衝動性」が有名ですが、
実際の生活の中で多くの人が悩むのは、もっとシンプルな感覚です。
“脳のスイッチが入らない時間帯がある”
“やる気がなくなる谷が突然くる”
この「覚醒の波の不安定さ」が、仕事や勉強のしづらさにつながっていることがあります。
そんなとき、自然に手が伸びるのが コーヒーやお茶、エナジードリンク といったカフェインです。
実はこれ、「怠け」でも「依存体質」でもなく、
多くのADHDの人が生きていく中で見つけてきた、**ごく合理的な“調整の方法”**です。
本記事では、「カフェインを“戦略”として使う」という視点から、
実践的なコツや注意点を整理してみたいと思います。
■ 1.ADHDの人がカフェインを求めやすい理由
ADHDの人には、次のような特徴がよく見られます。
- 朝、スイッチが入りづらい
- 午後に突然エネルギーが落ちる
- “やる気”ではなく、“覚醒レベル”が落ちてくる
- 机に向かう前の「始めるまでの壁」が分厚い
こうした状態は、意志や根性の問題ではありません。
単純に “脳の立ち上がり”が一貫しない のです。
だからこそ、刺激物であるカフェインが“ちょうどよく働く瞬間”があります。
これは「依存」ではなく、むしろ 自己調整の試行錯誤 といえます。
■ 2.カフェインは“万能薬”ではないが、道具としては優秀
カフェインは治療薬ではありません。
しかし、日常のなかでは次のような助けになることがあります。
- 眠気を軽くし、作業へ入りやすくする
- 朝の立ち上がりを整える
- 午後の“谷”を少し持ち上げる
- ルーティンのリズムを作りやすくする
(例:コーヒーを淹れたら仕事を始める、など)
つまりカフェインは 「脳のスイッチを入れるための小さな補助輪」 のような存在です。
■ 3.失敗しやすいポイント(よくある“落とし穴”)
ADHDの人は、以下のような形でカフェインを「失敗の方向」に使ってしまうことがあります。
● ① 夕方以降にも飲んでしまう
→ 寝つきが悪くなり、翌日さらに集中しづらくなる。
● ② エナジードリンクを“常用”する
→ 量が増えやすく、反動が大きい。
● ③ イライラ・不安が強くなるタイプなのに飲む
→ カフェインが逆効果になってしまう。
● ④ 朝すぐ飲む
→ 一見良さそうだが、身体がまだ覚醒していないため効き方が不安定。
カフェインは使い方次第でメリットにもデメリットにもなります。
■ 4.ADHDのための「カフェイン戦略」5つのコツ
① “目的”を決めて使う
ただなんとなく飲むのではなく、
「今から作業を始める」
「午後の谷を越えたい」
といった“使う理由”を決めると効果が安定します。
② 朝は「起床後90~120分」が最適
カフェインの飲むタイミングとして、
起床直後よりも、1.5〜2時間後の方が覚醒リズムが整いやすい ことがあります。
寝起きは体のホルモンバランスが不安定で、
このタイミングで飲むと「効くときと効かないときの差」が出やすいのです。
③ 午後の“谷”にピンポイントで使う
多くのADHDの人に共通するのが 13〜15時の落ち込み。
眠くなり、作業効率がガクッと下がる時間です。
この時間帯のカフェインは“戦略的に”動作しやすい。
④ 16時以降は原則避ける
夕方以降のカフェインは
睡眠リズムの乱れ → 翌日の集中力低下
につながりやすい。
ADHDの人ほど「睡眠の影響を受けやすい」ため、
夜間のカフェインはデメリットが大きいことが多いです。
⑤ 量をコントロールする(200〜300mg/日目安)
- コーヒー1杯:80〜100mg
- エナジードリンク1本:100〜150mg
- お茶は少なめ
「効くから」と量が増えていくのがADHDの人の“あるある”なので、
あえて上限を決めておく のが安全です。
■ 5.どんな人は“カフェイン戦略”と相性が良い?
- 朝のスイッチが入りづらい
- 昼過ぎに“谷”が来るタイプ
- 不安よりも眠気・だるさが主訴
- ADHD薬を使っていない方
- リズムの自己調整が得意な人
こうした場合は、カフェイン戦略は「生活の整え方のひとつ」になりやすいです。
■ 6.逆に、相性が悪いのは?
- 不安が強い
- 動悸が出やすい
- 睡眠がすでに不安定
- 夕方に必ず飲みたくなる
- エナジードリンクを習慣的に使っている
こうした場合は カフェインよりも睡眠調整や心身の安定を優先する方が楽になる ことがあります。
■ 7.まとめ
ADHDにとってカフェインは、
「依存」でも「万能薬」でもなく、
日常の中で自分のリズムを整えるための小さなツールです。
- 使いどころ
- 飲む量
- 飲む時間
この3つだけ押さえれば、カフェインは“味方”として働きます。
もし、「量が増え続ける」「睡眠が乱れる」「不安が悪化する」などがある場合、
無理に続けようとせず、一度立ち止まることも大切です。

