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歩いた方がうつに良い?

2024.05.24

うつ病の治療は、抗うつ薬などを投薬する薬物療法とカウンセリングなどによる精神療法を併用して行われますが、うつ病になじまないように思われる運動もまた、症状の改善に効果があるといわれています。

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うつ病の原因はまだ完全に解明されていませんが、最近の研究では、ストレスに晒されると脳の前頭前野・海馬などが萎縮し、BDNF(脳由来神経栄養因子)が低下し、これがうつ病を誘発するのではないかと考えられています。

運動をすると、前頭前野や海馬の体積が増え、血流が増加し、BDNFが増加します。BDNFは、神経の栄養のようなもので、BDNFが多くなると脳の神経が活性化され、心を安定化させる働きをもつセロトニンやノルアドレナリンなどの分泌が増加し、うつ病の改善を促進するといわれています。

ウォーキングをすると太陽を浴びることになります。この太陽を浴びるという行為が重要です。太陽光により脳内でセロトニンの分泌が開始。このセロトニンも神経伝達物質で「幸せホルモン」と呼ばれるものです。ウォーキングのように一定のリズムを刻む運動の場合、セロトニンをさらに活性化させます。結果としてウォーキングによって幸せを感じるのです。

このセロトニンはうつとも大きくかかわっています。セロトニンの分泌量が少ないとうつになりやすいという傾向があります。外で太陽の光を浴びながらウォーキングを行えばセロトニンが分泌されうつを遠ざけることも可能なります。実際にウォーキングを習慣化している人はうつの発症率が3割ほど低いという研究結果も出ています。また、運動をすると気分が爽快になり、心地よい疲労感に襲われることから質の良い深い睡眠を得られるのです。

どんな運動?

無酸素運動よりも長くゆるめの有酸素運動の方が効果的です。有酸素運動とは、酸素を多く取り入れ、その取り入れた酸素で体内の脂肪を燃焼させるものための運動です。

ウォーキング、ゆっくりした水泳などは有酸素運動です。無酸素運動とは、基礎代謝を増やす運動で、筋力トレーニング、短距離走などをさします。ただし、有酸素運動でもあまりに長時間やると負担になるので、ほどほどにしておくようにしましょう。

毎日決まったタイミングで…という方もいう方もいるでしょうが、メンタルに効果のあるウォーキングなら「思い立ったタイミングで」というのがおすすめです。好きな時に他の予定にしばられないでウォーキングをするということ自体がストレスを軽減させます。タイミングを決められないと続かないという場合はランチに行くとき、出勤の時などと決めても良いでしょう。

ウォーキングを行うのに適切な時間は30分くらいといわれています。男性なら一日9200歩、女性の場合は8300歩が日本で勧められている目標歩数です。これは1時間半ほど歩くことでクリア可能な数値なのですが、人間は日常生活でも歩きます。このことを勘案して健康的なウォーキングは30分くらい、楽しいと感じる時間で切り上げるのがおすすめです。翌日まで疲れが残るような運動はお勧めできません。

歩くという行為は単調な運動の繰り返しなので思考がクリアになりやすいといわれています。歩くことで時間的にも考え的にも余裕を持ち、が精神面での安定につながっていくことでしょう。ウォーキングにメンタルを変える即効性はありませんが、長く続けることで安定した状態を保ちやすくなります。

運動がうつ病に効果があるといっても、運動だけでうつ病が治るというものではありません。医師の指示による薬物療法、精神療法、あるいはストレスの元となっている環境調整などを行っていきましょう。

うつ病は、意欲が減衰していきます。重度のうつ病だとベッドからでることも困難な時があります。そのような状態では運動することは不可能です。

また、いくら運動が効果的だからと言っても、強度が高い運動を行うとBDNFが増加する一方で、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌も促進されてしまうことがありますので症状や体調に合わせたほどほどの運動が、運動療法の基本です。

うつ病で運動療法を行う時の注意点

・特に急性期には無理をせずとにかく休むことを優先に

・気分が悪い時は無理をしない

・義務感を持ちすぎない

・まずは軽いウォーキングから

・自宅の周りの危なくない環境で

・心臓、高血圧などがあれば内科医にも相談しましょう

当院で行っているrTMS治療について

このようにうつ病にはウォーキングがとても効果的ですが当院では、内服をしないうつ病治療rTMS(反復的経頭蓋磁器刺激法)を取り入れています。頭に直接、強力な磁気をあて、刺激を与えることで脳の機能低下を改善することを目的とした治療法です。

rTMS治療は前頭葉の一部分に磁気をあてて刺激を与えることで、前頭葉の活動を活性化させる一方、前頭葉の機能低下を補うためにオーバーヒートしている脳の扁桃体という部位の過活動を抑え、脳機能のバランスを取り戻しうつ病を改善させていきます。

rTMS治療の利点は体の負担は少なく、即効性があるということです。うつ病治療は本来であれば中途半端にすることなく、学校や勤務先を休んで、しっかりと治療に専念することが望ましいのですが、外来でrTMS治療を受け副作用のほとんどない運動療法を取り入れつつ日常生活を維持加療できる場合もありますので、お気軽にご相談ください。