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頭痛に効く漢方(速効性あり)

2024.08.30


テスラクリニックでは、漢方薬の処方も積極的に行なっております。
世間的には「体質改善」目的に内服して、いつの間にか効いているというようなイメージを
持たれている方が多いのではないでしょうか。
実は、漢方薬の醍醐味は速効性にあります。
必ずしも正確な説明ではないですが、イメージとしては、複数の生薬が「刺激として」体の
中のスイッチをオンにしたりオフにしたりして効果を発揮する場合があります。
そのため、薬を飲む→吸収されて血流に乗って特定部位に効果を発現というような塩梅では
なく、場合によっては舌に薬がついた瞬間に症状が改善されるという報告もあるようです。
今回は、「五苓散」に焦点を絞ってお話をしましょう。

頭痛に効く漢方:五苓散

五苓散は、心療内科・精神科領域では「頭痛」に対して処方されることが多いお薬です。脳
神経外科では、「脳浮腫」といって、脳梗塞や脳腫瘍、脳梗塞などで処方されることがある
お薬です。脳浮腫は、文字通り脳細胞が浮腫んだ状態です。進行すると呼吸や循環の中枢を
圧迫して死に至ることもある状態です。
五苓散はアクアポリン4という、水を細胞内に流入させる出入り口に作用して、水を細胞外
に出して脳浮腫を改善していきます。
専門用語でよくわからないという方や、そもそも他の頭痛薬(ロキソニンなどの消炎鎮痛剤)
や水分を追い出す薬(利尿剤)じゃダメなの?という反応をする方もいますよね。
さて、私たちの体は、概ね7割が水からできていて、絶えず移動しながら入れ替わっていま
す。それがなんらかの原因で全身または特定の部位に溜まったり、不足したりすることがあ
ります。前者はむくみとして、後者は乾燥として症状が現れます。
むくみのような水の代謝異常は急性の炎症によって起こる場合と、心臓(ポンプ)や腎臓(排出
)の動きが悪くなって起こる場合があります。後者の場合は、全身の水の代謝が悪くなって
いるので、利尿剤などの西洋薬が適しています。利尿剤は全身の余分な水を出してくれます

しかしながら、水の代謝異常の多くは全身ではなく局所に現れます。足のむくみなどはその
代表です。
局所に現れた水分の代謝異常に対して利尿剤を用いると、全身に作用するために、他の部位
で水不足が発生したり、電解質(Na,K,Clなど)のバランスが崩れたりします。さらに、水が
溜まってしまった原因の解決にも繋がらないです。
理想は、水分過多の部分の水だけ動かすことです。そして、漢方薬は特定の部位の浮腫を解
決できて、五苓散の場合はそれが頭だということです。
なぜそのようなことが可能かというと、私たちの体は諸説ありますが60兆個程度の細胞で
できているとされています。その一つ一つには「アクアポリン」と呼ばれる水の出入り口が

存在します。臓器や器官でどのアクアポリンが存在するかが微妙に異なっていて0〜12ま
で、13種類が存在します。脳細胞にはアクアポリン4が存在しています。これがなんらかの
原因で開きっぱなしになって、脳細胞の中に水がどんどん入ってくるから脳浮腫や頭痛にな
ります。
五苓散は、この開きっぱなしになっているアクアポリン4を閉じて、余分な水の流入を抑え
ることが証明されています。
脳のむくみだけを改善させて、他の部位には一切影響しないというのが特徴です。
五苓散のこういった効果は、その構成成分である蒼朮(そうじゅつ)、猪苓(ちょれい)に含ま
れるマンガンが重要な役割を果たしているとも言われています。

当院の患者だと、暑くなってきたので、暑気あたり(熱中症)の頭痛、二日酔いの頭痛で処方
される方が多いです。
みなさま、お気をつけてお過ごしください。

文責:高橋理程