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【中学受験・高校受験】合理的配慮の申請方法と注意点|現役医師がわかりやすく解説

2025.04.29

中学受験・高校受験における合理的配慮とは何か、どのような申請手続きが必要かを、現役医師がわかりやすく解説します。試験時間の延長や別室受験など、具体的な配慮内容も紹介。試験で力を発揮するための環境づくりをサポートします。

はじめに

「合理的配慮」という言葉を聞いたことはありますか?

受験の場面でも、障害のあるなしにかかわらず、すべての受験生が自分の力を正しく発揮できるように、環境を調整する配慮が求められます。

この記事では、合理的配慮の基本と、受験時における申請の流れや注意点について、わかりやすくまとめます。


合理的配慮とは?

合理的配慮とは、「障害のある人が、他の人と平等に機会を得られるようにするための支援」です。
日本では障害者差別解消法に基づき、2016年から国公立学校などで提供が義務化されています。

重要なのは、特別扱いをすることではなく、すべての人が公平に力を発揮できる環境を整えるための措置だということです。

本来、合理的配慮は障害の有無を問わず、「誰もが自分の力を発揮できるようにする社会的努力」として考えるべきものでもあります。


受験における合理的配慮の具体例

申請できる配慮内容は、受験生の特性に応じてさまざまです。たとえば:

  • 試験時間の延長
     (注意集中が困難な場合:例/ADHD〈注意欠如多動症〉など)
  • 別室受験
     (集団環境にストレスを感じやすい場合:例/ASD〈自閉スペクトラム症〉など)
  • 休憩時間の追加
     (強い不安やパニック発作が起こりやすい場合:例/パニック障害、不安障害など)
  • 読み上げ試験の実施
     (読字が困難な場合:例/ディスレクシア〈読字障害〉など)
  • パソコン入力による解答
     (手書きが極端に苦手な場合:例/発達性協調運動障害〈DCD〉、書字障害など)

※あくまで一例であり、実際には「診断名」ではなく、「本人が抱えている具体的な困難や支援ニーズ」をもとに検討されます。


配慮が必要かどうかは「一人ひとり異なる」

ここで大切なのは、
「同じ診断名でも、全員が同じ配慮を必要とするわけではない」
ということです。

例えば、ADHDと診断されている受験生でも、

  • 試験中に集中が途切れやすい人
  • 逆に試験環境では集中できる人
    では、必要な配慮は異なります。

つまり、配慮の要否や内容は、
診断名だけではなく、本人の具体的な困難さや、受験環境における影響をもとに個別に判断される
という点を忘れてはいけません。


申請のタイミングと注意点

配慮申請のタイミングにも注意が必要です。

  • 配慮申請は、通常の出願書類とは別に専用の申請書類を提出する必要があります。
  • 早い学校では、8月頃から配慮申請受付が開始される場合もあります。
  • 出願締切よりも前に配慮申請の締切が設定されていることがあるため、要確認です。

▶ 必ず志望校の募集要項を細かく確認し、申請スケジュールを逃さないようにしましょう。


申請に必要な書類

一般的に求められる書類は次の通りです。

書類内容
医師の診断書・意見書DSM-5やICD-10に準拠した診断名、障害特性、必要な配慮の根拠を記載
学校(在籍校)の意見書日常生活や学習上の配慮状況、これまでの支援とその効果について記載
本人・保護者の申請理由書なぜ配慮が必要か、本人にとってどんな意味があるかを説明

※学校によってフォーマット指定がある場合もありますので、必ず個別に確認しましょう。


まとめ

受験は、受験生一人ひとりが持っている力を正当に評価されるべき場です。
合理的配慮の申請は、そのために必要な、大切な手続きのひとつです。

診断名の有無にかかわらず、本人が抱える具体的な困難に応じた支援を整えること。
そして、必要な配慮を早めに準備し、スムーズな受験当日を迎えること。

この両方を大切にして、ぜひ未来への一歩を踏み出してください。


【あとがき】

合理的配慮を申請することは、決して「甘え」ではありません。
合理的配慮とは、特別な扱いを求めるものではなく、誰もが公平に力を発揮できる環境を整えるための社会的な努力です。

法制度上は障害のある方への義務として位置づけられていますが、
実際には、すべての人にとって大切な考え方でもあります。

どうか、必要な支援を受け取り、あなたらしい未来を切り拓いてください。