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生活保護の受給条件と申請の流れ|精神科医が現場から伝えたい注意点

2026.02.04

生活保護の受給条件や申請の流れを、精神科医が診療現場の視点から解説。精神疾患がある場合の注意点や、よくある誤解、Q&Aもわかりやすくまとめています。
  1. 生活保護の受給条件と申請の流れ:どこに相談すればよいか、どんな点が確認されるのかを、制度の基本から整理します。
  2. 精神疾患がある場合に起こりやすい注意点:躁状態や病識の変化によって、判断が揺れやすくなる場面を、精神科の診療現場の視点から解説します。
  3. 車・スマホ・家賃・アルバイトに関するよくある疑問:実際によく質問されるポイントをQ&A形式でまとめ、相談前に知っておきたい実務的な情報を整理します。

「生活保護は最後の手段」「一度受けたら抜けられない」
そう思って、相談が遅れてしまう方を、精神科の診療現場で何度も見てきました。

実際には、生活保護は人生を立て直すための一時的なセーフティネットです。
特に、うつ病や双極性障害、発達障害などで就労が困難な時期には、医療と並行して検討されるべき制度でもあります。

この記事では、制度の基本と、医療現場から見た注意点を簡潔にまとめます。


生活保護とはどんな制度か

生活保護は、日本国憲法25条に基づき、
「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するための制度です。

病気、障害、失業、家庭環境などの理由で生活が立ち行かなくなった場合に、
一時的に生活を支えることを目的としています。

「働けるかどうか」だけで判断される制度ではありません。


生活保護を受けるための基本条件

一般的には、次のような点が確認されます。

  • 収入が最低生活費を下回っている
  • 預貯金や利用できる資産がほとんどない
  • 病気や障害などにより、現実的に就労が困難な状態にある
  • 家族からの継続的な援助が期待できない

精神疾患や発達障害がある場合、
医師の診断や意見が重要な判断材料になることも少なくありません。


申請の流れ(概要)

  1. 住民票のある市区町村の役所にある
     生活保護を担当する窓口(保護課など)へ相談
  2. 生活状況の聞き取り
  3. 必要書類の提出
  4. 原則14日以内(最長30日)で可否の決定

重要な点として、
「申請したい」と意思表示した場合、申請そのものを拒否されることはありません。


精神科の現場でよくある「つまずき」

ここからは、制度の話というより臨床上の注意点です。

精神科の診療現場では、
病状の影響で、本人にとって不利な意思決定がなされてしまう時期をしばしば経験します。

たとえば、双極性障害などで見られる躁状態や病識の低下がある時期には、

  • 「自分はもう大丈夫だ」
  • 「支援なんて必要ない」
  • 「働ける気がする」

と感じやすくなり、
生活保護の申請を自ら取り下げてしまうことがあります。

制度に問題があるというより、
その時点では冷静な判断が難しい状態であることが背景にあります。

後から振り返ると、
「なぜあのときあんな決断をしたのか分からない」
と本人が語られるケースも珍しくありません。


大切なのは「一人で決めない」こと

生活保護の申請前後は、

  • 本人
  • 家族
  • 医療機関
  • 福祉(ケースワーカー等)

同じ情報を共有することがとても重要です。

判断能力が揺れやすい時期ほど、
「一人で決めない仕組み」を意識的につくることが、結果的に本人を守ります。

医師の診断書や意見書で、
意思決定の不安定さに触れることが必要になる場合もあります。


まとめ

生活保護は、「人生を諦めた人の制度」ではありません。
回復や再スタートのための足場です。

精神的な不調があるときほど、
制度の話を冷静に考えるのは難しくなります。

だからこそ、
医療と福祉を同時に使う視点が大切です。

迷っている段階でも、
まずは相談すること自体は、決して間違いではありません。


よくある質問(Q&A)

Q1. 車は持てますか?

原則として、自家用車は保有できないとされています。
ただし、例外的に認められる場合もあります。

  • 公共交通機関が著しく不便な地域に住んでいる
  • 通院や通勤に車が不可欠で、代替手段がない
  • 障害や病状により徒歩・公共交通の利用が困難

といった事情がある場合、
必要性が個別に判断されることがあります。


Q2. スマホは持てますか?

現在では、スマートフォンの所持は原則可能とされています。

スマホは、

  • 連絡手段
  • 行政・医療機関とのやりとり
  • 求職・就労準備

などに必要不可欠な生活インフラと考えられています。

ただし、

  • 高額な機種
  • 過度に高い通信プラン

については、見直しを求められることがあります。


Q3. 家賃はいくらまで大丈夫ですか?

家賃には、地域ごとに上限(住宅扶助基準)があります。

  • 現在の家賃が基準内 → 原則そのまま
  • 基準を超えている → 転居を検討する場合あり

ただし、

  • すぐの転居が困難
  • 病状的に環境変化がリスクになる

といった事情があれば、
一定期間の猶予が設けられることもあります。


Q4. 生活保護を受けながら通院できますか?

はい、通院は可能です。
むしろ、治療の継続は重要視されます。

医療費は「医療扶助」により原則自己負担なしとなり、
精神科・心療内科への通院や薬物療法も対象です。


Q5. 障害年金とはどう違いますか?

混同されやすい点ですが、目的が異なります。

  • 生活保護:最低限の生活を支える制度
  • 障害年金:障害による収入減少を補う年金制度

両方を同時に利用することもありますが、
障害年金が支給される場合は、その分が生活保護費から調整されます。


Q6. 将来、働けるようになったらどうなりますか?

状態が回復し、収入が得られるようになれば、
生活保護は段階的に終了していきます。

  • 働いたら即終了
  • いきなり全額打ち切り

ということは通常ありません。


Q7. 相談したら必ず受給になりますか?

いいえ。
相談=即受給ではありません。

ただし、
「今の状況で制度の対象になりうるか」
を確認すること自体は、何も悪いことではありません。


Q8. 生活保護を受けながら、すぐにアルバイトを始めてもいいですか?

結論から言うと、「いきなり始める」ことはおすすめされません。

生活保護は、
生活と体調を一度安定させることを前提にした制度です。

精神的な不調がある場合、
「少し調子が良い日」が
そのまま就労可能な状態を意味するとは限りません。

実際の診療現場では、

  • 数日調子が良く感じて急に働き始める
  • その後、体調や生活リズムが崩れる
  • 手続きや支援関係も混乱する

といった経過をたどるケースも少なくありません。

アルバイトを検討する場合は、
主治医やケースワーカーと相談しながら、
短時間・段階的に進めることが大切です。

働くこと自体が悪いのではなく、
「いつ・どの段階で始めるか」が重要になります。